ピピッ・・・・・


リモコンでエアコンの設定温度をあげる音が響く。

かなめはリモコンの画面へと視線を落として首をかしげた。

「うーーーん・・・・・おかしいなぁ、暖かい風は出てきてるんだけど
 部屋がまったく暖まらないんだけど」

ソファーへとリモコンを放り投げてかなめは窓のカーテンを開けた。

「うわ!なにこれ」 ―――――― 外にはふわふわと雪が舞い降りていた。






     『 ほっかほか 』






「そりゃ、部屋もなかなか暖まんないわ」 かなめはブルっと体を震わせると
カーテンを閉めもう一度 リモコンを手に取るとまた温度を少しばかり上げた。


「あんまり温度あげたくないんだけどな・・・・・」


しかし、そんなことも言ってられない。 今からお風呂に入ろうと思ったのに部屋が冷えててはよくない。

なので暖まる間だけ温度をいつもの設定温度より上げた。

かといってバスルームが暖かくなるわけでもなくなかめはしばらく考え込む。


  こんな日は体をゆっくりと温めたいし・・・・・

  久しぶりに銭湯でも行ってこようかな?


かなめはいそいそと銭湯へ行く準備を始めた。 上着を着こんで荷物を持って・・・・

こんな厚着をするならわざわざ銭湯へ など行かなくてもいいのにと思うのだが行きたいと思ったらもうとまらない。

それに銭湯だとお湯がいろんなお風呂が楽しめて本当に体の芯まで温まる。

帰ってくるまでに冷え切ってしまうことは無いだろう。 そしてかなめは足早に部屋を後にした。

マンションを出てすぐ誰かに声をかけられた。

その方へ視線を向けるとその先に傘もささずに寒そうに震えながら宗介が立っていた。


「千鳥、こんな時間にどこへ行くんだ?」

「あっソースケ。あたし?あたしはちょっと先の銭湯へ行こうと思って。そういうあんたこそどうしたのよ」

「俺か俺はちよっとそこのコンビニまで買い物に行くところだ。
 ところで戦闘って千鳥何処に戦いに行くんだ!俺はそんなこと何も聞いていないぞ」

「はぁ?」


宗介の反応に何を言っているの?っと言う顔をするかなめ。


「あのね、戦闘じゃなくて銭湯」

「だから、戦闘じゃないのか?」

「いや、だからね・・・・・」


かなめは『はぁー』とため息をつく。


「戦うんじゃなくて、せ ん と う お風呂よ!お ふ ろ!!」

「風呂?」

「そうよ、あんた行った事無かったけ?大衆浴場よ」

「大衆浴場?」


言われて一瞬宗介は考え込む。


「・・・行った事無いぞ。大衆浴場ってなんだ?」

「お金を払って入る大きなお風呂よ」

「大きな風呂?」


またしてもわけがわからんという表情をする。 その表情を見て『そうねー』とかなめは考え込む。

そして何かを思いついたように表情を変えると言った。


「ちょっと違うけど簡単にいうと温泉に似てるわね」

「温泉に?」

「うん。温泉でいろんな人と一緒に入ったでしょ?」

「あ・・・あぁ」

「それと似たようなもんよ。じゃさ、あんたも一緒に行く?」

「行ってもいいのか?」

「もちろんよ、大衆浴場だもの」

「そうだな・・・・」


宗介は少し考えるしぐさを見せすぐに返事をした。


「では、一緒に行こう」

「じゃ、待ってるから着替えとタオルもってらっしゃいよ」

「わかった」

「寒いから急いで戻ってきてよ」

「了解した」


宗介はかなめに言われるまま荷物を取りに部屋へと戻っていった。


「さ、ついたわよ。あんたはそっちの男って方ね。あたしはこっちだから」


入り口へと指差しかなめは宗介に指示をする。


「了解。しかし、入り口が違うとなるといつ出るかわからないぞ」

「あ!それなら大丈夫、出る前に声をかけるから。先に出るんだったらあんたから声かけて」

「声をかける・・・・・?」


宗介は不思議そうに首をかしげる。


「どうやってだ?」

「普通によ、いまから出るって中から叫んでくれればいいわ。それでわかるから」

「・・・・・・了解した」


宗介は返事をしたもののやはりまた首をかしげる。

しかし、わかると言われたからにはそうなのだろうといわれるまま中に入った。

入り口を抜けると番台は男女とも一緒なため店主を挟んで反対側にかなめの姿が見えた。


「ソースケ、ここでお金払うのよ」

「金?金を払うのか?」

「そうよ。ただで入れるわけないでしょ?おばさんいくら?」

「〇〇〇円だよ」

「じゃ、これね。ソースケあんたも早く」

「あ・・・あぁ・・・了解した」


ポケットからコンビニで買い物するはずだったお金を出し払う。


「じゃ、ソースケそこの脱衣所で脱いで着替えはロッカーに入れてお風呂に入るのよ。
 あ!そうそう、物騒なものは中に入れちゃダメよ」

「ダメなのか?」

「当たり前でしょ!全部ロッカーに入れるのよ。
 前にみんなと温泉に行った時も中には入れなかったでしょ?それと一緒」

「り・・・・了解した・・・・・」

「じゃ、また後でね」

「あ・・・・・あぁ・・・・・」


そしてお互いに脱衣所へ向かった。


  ソースケ本当に大丈夫かしら?


多少不安に思ったかなめだったがここまで来たらどうすることも出来ない。

かなめは衣服を脱ぎ中へと入っていった。

その頃、宗介はというと不安にかられながらもかなめに言われたとおり 衣服を脱ぎ
全てのものをロッカーに入れると中に入っていった。

温泉とはまた違う少しのスペースにいろいろなお風呂が沸いているのをみて宗介は目を見開いた。

普通の湯もあれば入浴剤が入っている湯もある。

湯気が出ていないので気になって手を入れてみるとそこは水風呂であまりの冷たさに驚く。

そして宗介はもっと驚いた。 それは、ただの湯が入っているだけだと思った湯船に手を入れたとたん全身に電気が走ったのだ。


  「うわぁ!!、なんだこれは!?新たな兵器か!!」

叫んでみたものの死にいたるほどの電流が流れたわけではない。 その時宗介の視界にその湯船の注意事項が目に入った。

それをみて宗介は納得する。


「なんだ、電気湯というものなのか」


と。 すると壁の向こうからかなめの声が聞こえた。


「ソースケ!どうかしたの?なに騒いでるのよ!」

「い・・・いや、なんでもない。少し驚いただけだ」

「そう?あんまり変なことしないでよ」

「わかっている」

「頼むわよ。あたしはそっちにはいけないんだから」

「あぁ・・・・」


  そういえば中に入ればわかると千鳥は言ってたが・・・・・・

  こういうことだったんだな。

  となりと壁一枚で隔ててあるだけなんだな。

  だから叫ぶと声が筒抜けだということか。

  しかも声が響いている。

  銭湯というのはこんなに楽しいものなのか?


気づけば宗介の心はなぜかドキドキわくわくしていた。

   そして宗介はもう一度試しに叫んでみた。


「ち・・・千鳥・・・・・?」


お風呂場一面に宗介の声が響き渡る。 それと同時にかなめの声が返ってきた。


「なに?どうかした?まさかもう出るんじゃないでしょうね?」

「違う。少し聞きたいのだがここにある風呂は全部入っていいのか?」

「そうよ、好きなだけ入ったらいいのよ」

「わ・・・・わかった」


ますます宗介の目が子供のように輝きだすと嬉しそうに湯船の中へと入っていった。

順番にゆっくりと端から入る。 お風呂だけだと思っていたらサウナまである。

宗介はうまい具合に水風呂を利用しながら湯船に入ったりサウナに入ったりと のぼせないようにお風呂を楽しんでいた。


  ふむ。これだとずっと楽しめる。

  体も芯から温まるしかなり疲れもとれるぞ。


宗介はかなり銭湯が気に入った様子でひとり満足しながら銭湯を楽しんでいた。








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