――緋い大地。緋い砂塵。
 全身朱に染まった女が、激しく叫ぶ。
 
 
 ……その穢らわしい手で、私に触れるな。




緋。(前編)





 その日、小野寺孝太郎は左頬にガーゼ、額に包帯をぐるぐる巻いた華々しい姿でこう言った。
「ちょっとニシコーの連中とやりあっちまってさ。ま、名誉の負傷ってやつよ」
「名誉の負傷って……オノD、ケンカなんかするタイプじゃないだろ?」
 風間信二が尋ねると、孝太郎は顔をしかめた。
「あ、てめ。せっかく人がワルぶってみたってのに。――おお、そうだよ。
 チラッと目が合っただけだってのによ、あいつら」
 彼はガーゼの上からでもわかる、頬の腫れをそっと押さえた。
「俺は身体がでかいし、見ようと思えばヤンキーにも見えるからな。
 インネン吹っかけられて、殴り飛ばされてこのざまだ」
「あのガッコの奴ら、悪いからなあ」
「オノD、かわいそう……」
 信二とともに周囲に集まってきていたクラスメイトの幾人かが、顔を見合わせうんうんとうなずく。
 孝太郎はそれに対し、ひらひらと片手を振った。
「へっ、どうってこたねえさ。一番強そうなのには一発カマしてやったからな。
 あれはすっきりした、うん」
「――しかし、それでは充分な報復とは言えんな」
 重々しい声がして、一同が振り向くと、相良宗介が相も変らずのむっつり顔で立っていた。
  ――いや、心なしかいつもより、より一層難しい顔をしているようにも思える。
「小野寺。聞いたところでは、君は目が合ったというだけで、相手にそれだけ殴られたのだろう」
「ん、まあな。ちなみにヤンキー用語じゃ、メンチを切る、って言うんだぜ、相良」
 あくまでも軽い調子の孝太郎に、重苦しくうなずく宗介。
  彼は自身の顎に手を添えて、眉間に深い皺を刻んだ。
「そんな取るに足りない理由で人を殴るような暴徒を、そのまま放置しておいていいのだろうか。
 見せしめにひとりぐらい、血祭りに上げておいた方がよくはないか」
 口にこそ出さなかったが、その場にいたほぼ全員が心の中で
 「おまえに言われたくないよ」と突っ込んだ。
 が、孝太郎は違った。やれやれと無言のうちに首を振る連中を横目で見遣り、
  この日初めて不愉快そうな表情になる。
「いいんだって。ヤンキー世界じゃよくある話だ。俺はもう納得してる」
 「しかし」と、宗介は食い下がる。
「教訓を与えておかねば、君はまたいつ、同じ輩にそのような目に合わされないとも限らんぞ」
「キョークンってなんだよ」
「……君に手を出せばどれほどの損害を被ることになるか、という実感だ。
  なんなら、俺が手伝ってやってもいいが」
「いんねー」
 孝太郎はぞんざいに言うと、椅子の背もたれに一度ぐいっと背を預けた。
  それからその反動を利用するようにして、バネ仕掛けの人形のように起き上がると、
  宗介の顔に自分の顔を近づける。
 孝太郎は宗介の目を正面から見据え、いつもの彼らしからぬ真面目な顔つきでこう告げた。
「相良ぁ。俺のこと心配してくれてんのは分かってっけどさ。……おまえ少々、度が過ぎてるぞ」
「――そんなことはない。俺も多少は成長している。学生相手に重火器を使用するつもりはないぞ」
「そういうことじゃ、なくってさ」
 孝太郎の目は、あくまでも真剣だった。
「なんつーのか、ものの考え方ってのか、発想がな」
 孝太郎の指が宗介の鼻面に伸びる。
  二人のやりとりをやや離れた距離から眺めていた千鳥かなめは、その仕草になぜかどきりとした。
「……血腥いんだよ、おまえは」





 ――血腥い。
 別に聞き慣れた言葉だ、と宗介は思う。目を落としていた軍関連の専門誌から顔を上げ、
  彼は自分以外誰もいない室内を見渡した。
 陣代高校の南校舎、四階に位置する生徒会室。
  非常に珍しいことに、宗介は今、この部屋でひとりだった。
 生徒会長の林水敦信は教師との折衝があるとかで職員室、書記の美樹原蓮は、
  その彼に付き従って当然不在。会計係の岡田隼人、備品係の佐々木博巳は、
  ともに私用で今日は初めから顔を出す予定はない。
  副会長の千鳥かなめは、これはまた、林水とは別の用向きで職員室に出向いている。
 実際、宗介の与えられている「安全保障問題担当・生徒会長補佐官」という役職は、
 有事でもない限りはただの雑用係に過ぎないのだった。そしてこういう場合、
 雑用係としては特に何もすることがない。
 人気のない室内は、なぜだかいつもよりよそよそしく思えた。
 宗介は本を閉じ、少しの間目を閉じて、眉間の皺を指で揉む。
(血腥い)
 孝太郎に言われた一言が、なぜか頭の一隅に残って離れない。
 よく聞く言葉、よく言われる科白だ。それがどうして、こうも心に重いのだろう。
 ――そう言ったのが、小野寺孝太郎だったせいか。平和な日本で出来た、数少ない友人の。
 宗介は目を開く。いつの間にか、陽は大きく傾いて、部屋の中には幾筋もの赤い光線が入り込んでいた。
 べったりと赤いその色に惹かれるようにして、彼はなんとなく窓の外へと視線を向ける。
 校庭を一望できる生徒会室。窓の外の景色も、真っ赤な色に染まっていた。
 そろそろクラブ活動も終わる時刻なのだろう。校庭に出ている人の姿もまばらだ。
 ――既視感。
 緋い大地。緋い砂塵。血のような光を吐いて、沈んでゆくどろりと濡れた赤い太陽。
 たなびく朱色の衣。全身真っ赤な女が――……
「血腥い! そんな手で触れないで……!!」





 それは彼にとっては取るに足りない仕事だった。
 新たな傭兵の口を捜して、中央アジアの諸国を渡り歩いていた頃だ。
 世界地図にすら名前を載せ忘れられるような小国で、クーデター騒ぎが起こった。
 彼はたまたまその時その国に居て、自身が国境を越えるついでのつもりで、その仕事を引き受けた。
 仕事の内容は至極単純。クーデターの質に取られそうな一部市民を、
 護衛し隣国の友好軍に引き渡してくれという、それだけのものだった。
 仕事仲間は同じような雇われ兵が数人。国も反抗勢力も貧しすぎて、
 ASは言うに及ばず戦車すら調達できないような有様だったので、両者の激突は主に白兵戦にて行われた。
 宗介たちのような戦争のメインから外れた戦いでは、特にその傾向が顕著だった。
 銃すらろくに持てない状況だったが、相手も同じだったので、戦力的には気にならなかった。
 どうせ逃げるのだ。多少の荷物を背負って逃げるくらいはどうということでもないし、
 それで駄賃がもらえるのならば悪くはない――宗介を含め、他の傭兵たちもほぼ全員、
 そんな思いでいたことだろう。弱小国の、ひ弱な反乱軍。ろくな訓練も受けてはいまい。
 実際、彼らを追い散らして進むのにさほどの困難は伴わなかった。旧式のライフルと、
 グルカナイフがあればそれで充分。とは言え町のチンピラを叩きのめすようにとはさすがにいかず、
 数人は血溜まりの中に沈めた。
 中には護衛対象の列の側面にまで肉薄して来た者もいたが、
 宗介はこれをライフルのストックで打ち払い、手にしたナイフごと弾き飛ばした。
 しかし、それでも相手は向かってきたので――あまつさえ、腰に下げていた自動小銃――
 この組織にあっては上等な部類の火器だ――に手を伸ばしたので、
 彼はやむなくグルカナイフを投げ放った。ナイフは敵の額の中央に綺麗におさまり、
 血飛沫を上げさせることもなく無力化した。目の前で行われた惨劇に混乱したのか、
 悲鳴をあげて隊列からまろびでた女もいたが、宗介は有無を言わさずその手を引いて、
 乱暴に列の中に押し戻した。
 あとは、ただまっしぐらに走り続けた。国境を示す、鉄条網のゲートを目指して。





 やっと国境を越え、鉄条柵の間近にある兵設のための広場までたどり着いた時には、
 陽はもうずいぶんと傾いてしまっていた。政治的な理由で友好軍の到着が遅れていることを知らされ、
 待ちぼうけを喰らっている一同の顔には焦燥の色が濃い。
 目立った損傷もなくひとりの脱落者も出さずに避難民を引っ張ってきた護衛側も、
 それは同じ。彼らを無事に引き渡せねば仕事を完遂したことにはならないため、
 報酬をもらって意気揚揚と自由の身となることは許されない。
 宗介は長く深いため息をつき、わき腹に掠める程度に受けた傷をそっと抑えた。
 先ほど無力化した、自動小銃の男にやられたものだ。
 咄嗟にライフルを盾に防衛したが、防弾着さえ支給されないような状況下では、
 ナイフ一本でもやすやすと命を奪われる結果につながる。
 実際、あの戦闘は簡単なようでいて、危うかった。
 ナイフの切っ先で服を切り裂かれ、それが肌を抉った時、
 これは殺さなければならない相手だと本能が告げていた。
 ――そして実際、その通りになった。
 人を殺しても、さほどの感興は沸いてこない。ただ、ため息が漏れるだけだ。
 それすらも、状況によっては怪しい。宗介は時折、血に酔っている自分自身を自覚する。
 かつての自分には、人の死を恐れ怯える、そんな潤った部分もあったのだろうか。
 ……思い出せない。





 それは、油断であったのかもしれない。リスクの少ない戦い。警戒を怠ったつもりはまったくないが、
 一応の危険領域から逃れて、ぽっかりと空いた時間――そんなものが出来てしまったことによる。
 彼がほんのわずかな物思いに沈んでいる間に、ひとりの女が側寄って来て、声をかけた。
「ねえ」
 若い女だ。あちこちが砂塵や埃に汚れてしまってはいるが、真っ赤なケープを被っている。
 顔はよく分からない。目を伏せているからだ。
「あなた、いくつ? ずいぶん若く見えるけど」
 妙な女だ、と思った。全員が疲弊し、なおかつ焦っているこの時に世間話など。
 宗介は眉根を寄せたが、質問には答えた。特に無視する理由がなかったせいだ。
「十四。あるいは、十五」
 素っ気ない言い方だった。そもそも彼は、この地方の言語がよく分からない。
 おまけに、これまで年齢を訊かれて愉快な気分になったことなど、ほとんどなかった。
「十五……そんな年で」
 女は彼の無愛想に過ぎる対応にも、気を悪くした様子はなかった。ただ、ささやくように声を落とした。
「そんな年で、あんなにたくさん。……信じられない」
 宗介はそれ以上何も答えず、女から顔をそむけると背筋を伸ばした。
 遠まわしに、仕事の邪魔だ、向こうへ行けと、そう示したつもりだった。
 だが、女はそんな彼の態度には構わず、続けて言った。
「さっきも、ひとり殺したわね。ナイフ一本で」
 女の指がすっと伸びて、宗介の脇腹に触れようとした。
 「妙」が「危険」に昇格した瞬間だった。何かを考える前に、彼は身体を後ろに引いた。
 緋色のケープが跳ね上げられ、中から銀色の光が迸り出る。
 小さな短刀の種類だったが、それは宗介の着ていたシャツを斜めに長く切り裂いた。
「こんなふうに!」
 女が叫ぶ。宗介はなおも繰り出してくるナイフを持つ腕を掌底で止め、女の背後に素早く回ると、
 その腕をねじり上げた。これもまた、何も考えない――ほとんど反射のような行動だった。
 腕をひねられる苦痛に耐え、女は血を吐くようにして叫ぶ。
「あんたが! 殺した! あたしの夫を!」
「……おまえの?」
 呆然とつぶやいて、宗介はようやく思い出した。この女だ。あの男を無力化したとき、
 悲鳴を上げて駆け寄ってきた。錯乱した様子で。
 宗介はそれを、死を間近に見た恐怖でパニックを起こしたのだと思った。
 それだけの話だと、意に介しもしなかった。
 騒ぎを聞きつけて、ほかの傭兵仲間も駆けつけてくる。宗介は女の腕をねじり上げたまま、
 落ち着いた声で言った。
「おまえはテロリスト側の人間……つまり、スパイか」
「そうよ……!! 敵の内懐に入り込み、情報を流すのが役目だった!」
 ヒステリックに女は喚いた。どこか投げやりな口調でもあった。
 宗介は、軽く眉間にしわを寄せた。
「わからん。なぜ、このような真似を。任務を放棄するつもりか?」
 それとも、やはり裏があるのか。いや、あるのだろうと仮定して、宗介は問うた。
 彼には、女の行動理由が解せなかった。
 ――女は、しばらく黙っていた。それから、ゆっくりとこちらに顔を向けようとする。
 宗介は女の身体を解放しない程度に、少し力を緩めてやった。目と目が合う。
 彼女は、ぽかんとした顔をしていた。なぜか、周りに集まった他の人間までも、
 同じような表情で彼を見ている。
「……?」
 不審げに瞳を細めた宗介に、女の赤い唇がゆがんだ。
 ゆがんだ唇は、それよりさらに、ゆがんだ笑いを吐き出した。
 女は甲高い声で叫ぶように笑う。引き攣った唇は、まるで血を湛える傷口めいて、不吉に映えた。
 見兼ねた数人の傭兵が、女の肩を押さえつけるようにする。代わりに宗介が、彼女から手を離した。
 彼が自分の正面に回ったのを確認すると、女は縁に涙を浮かべた眼でぎゅっと睨みつけてくる。
 その瞳は炎のように激しかったが、同時にどこかひどく乾いて冷めていた。
「なんて可哀想なあたしのあの人。こんな、人の感情も分からない殺人機械【キラー・マシン】
 に殺されてしまっただなんて」
 ぴくぴくと分厚い男たちの掌に押さえられていても尚、女の肩は痙攣を続けていた。
 それから、急にがっくりとうなだれる。女を抱えて、男たちが歩き出す。
 集まって小さな包囲の輪を作っていた野次馬が、慌てたように道を開けた。
 後に続こうと宗介も足を踏み出すと、目線でここで待てと示された。彼は肯き、それに従う。
 赤い夕日が陽炎をにじませながら、地平線へと沈んでゆく。
 緑の少ない地帯だったため、大地は陽の色を吸い込んで、まるで巨大な血だまりのようだった。
 女の細い背中が、徐々に小さくなってゆく。
 ――彼女がどうされるかは、分かりきったことだった。
 宗介たち人手不足のにわか傭兵部隊には、再び国を真横に突っ切って、
 彼女の身柄をしかるべき機関に引き渡すだけの余力はない。
 これから来る友軍にも、避難民の他に捕虜までをも養う義務も余裕もないはずだった。
 ここに辿り着くまでの間にも、彼女は多くのことを知っただろう。
 戦争において情報の漏洩は、即敗戦に繋がりかねない重大事だ。
 こういう、慎重な扱いを要し、なおかつそれが難しい敵間者の、もっとも効果的な対処法はと言えば。
 ――非常にシンプルで、原始的だ。
 宗介はまた我知らずため息をつき、汚れた靴先でくしゃくしゃになっているものに目を留めた。
 拾い上げてみると、それはモノクロの写真だった。
 もとからぼろぼろだったのだろう、あちこちに古い小さなしわが寄っていて、画像もどこか不鮮明だ。
 それでもどうにか目を凝らすと、被写体は若い男女だと分かった。
 粗末なこちらふうの家の前で、肩を組んで笑っている。二人の表情は、とても満ち足りて見えた。
 女は、あの女だ。男の方は――おそらく、彼女の夫だろう。
 多分、先ほどの揉み合いで、彼女が落としたものに相違ない。
 自然、足が駆け出していた。女の姿は、赤い大地にごろごろと散らばる巨石のひと群れの前に、
 ぽつんとあった。傭兵の一人が、岩の陰に入れとその背をぐっと押す。
 全力で走ったので、少し息が上がっていた。宗介は、自分でもなぜこんな行動に及ぶのか不明なまま、
 怪訝そうにする女の胸元にモノクロ写真を差し出した。
 女は、受け取ろうとしなかった。だが、写真の中に目を留めたとき、
 その瞳は確かに不安定に揺れていた。
 仲間たちも、足を止めてその様子を見守っているらしかった。
 誰もがみな、これくらいの慈悲は許されてしかるべきだと、考えていたのかもしれない。
 だが、女は石像のように動かない。仕方がないので、宗介は、
 女のケープの合わせにそれを差し込もうとした。
「い……いやっ!」
 女は掠れた声で叫ぶと、宗介が差し入れた写真を、身をよじって振り払った。
 そうして、そのまま踵を使って、ぼろきれのような写真をさらにぐしゃぐしゃにしてしまった。
「さわらないで! そんな穢れた手で……!!」
 地平線に押しつぶされるようにして、太陽が地表から消えてゆこうとしている。
 最後の緋色の残滓を両眼に宿した彼女は、まるで自ら発光しているようだった。血の色に。
「俺は……ただ、写真を」
 自身の声が、少しだけ遠くから聞こえた。
 女の目は、それとは逆に、ぎくりとするほど間近に思える。
 燃え盛る、凄惨で冷たい、憎悪の火。嫌悪の念。
「あんたの触れたものなんて、もう要らない。血腥い人殺し。
 その若さで、いったい何人の血を吸ってきた? あたしの悲しみも理解できない、冷たいその心で」
 女の言葉は、宗介の心に微風を帯びた小波すら立てなかった。
 ただ、胸の奥がすうっと冷えたような心地がしただけだ。
 女は感情の見えない彼の眼差しに、どろどろと憎しみの渦巻く目線で応える。
「呪われて、地獄に落ちてしまうといい……!!
 血に穢れたその手で、掴めるものなど闇でしかないと知るがいい。
 あたしは、あんたに穢されたものなんか、何も要らない」
 時間切れのようだった。もう、陽が落ちる。夜になると銃の的が絞りにくくなるので、
 早々に済ませてしまわなければならない。どこか沈痛な表情で、男たちは女の身体をゆすりあげた。
 彼女は、唯々諾々とそれに従う。
 やはり、どうしてなのかは分からない。宗介は、瞬間彼女を、引き止めたい衝動に駆られた。
 引き止めてどうするかまでは、まったく考えていなかった。
 知らず腕を伸ばしていた彼に、女は振り向く。
 一切の赦しを持たないその表情が、蝋燭の灯が瞬くようにして微笑んだ。狂気をはらんで。
「……だから。あたしの命も身体も要らないの」
 女の緋色のケープが、風に揺れて滑り落ちた。
 こぼれた髪が、風に巻かれて長い尾を引く。その髪筋も、するりと巨石の陰に消えた。
 すぐに、乾いた音がした。数発。続いて、どさりと何かが落ちる音。
 ――女の声はしなかった。叫び声すら。





▼NEXT





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送