雪の記憶




雪を見ると思い出すのは決まっていつも哀しい思い出だ。

鉛色の空から延々と降りしきる、真っ白い白い雪。

雪に埋もれる鋼鉄の墓標。雪原に朽ち果てる戦友たち。

俺は―――雪が―――嫌いだ。




「ソースケ! ねぇ、ソースケってば!」

窓の外を見るなりかなめは声を上げた。

その声はまるで珍しいおもちゃを見つけた子供の様だ。

「……どうした? まだ寝ていたいのだが……」

「寝ているって、そーゆー場合じゃないわよ!」

何か彼女の心を刺激する物が見つかったのだろうか。

まあ、推測するに地雷とか、手榴弾とか、そういった危険物の類ではなさそうだ。

とりあえず俺は布団に包まりながら、彼女の報告に耳を傾けることにした。寒いから。

「どういう場合なのだ? 主語と述語を的確に言って欲しいのだが」

「雪、雪が積もっているわよ!」

言葉から彼女の興奮が伝わってくる。かなめはそう言いながら窓を開け放つ。

外の外気が部屋へと入ってきて部屋の気温を著しく低下させた。

布団から顔を出して外の風景を覗き込むと、外は一面雪景色だった。

銀世界と言った方が正しいだろうか。まあ、何はともあれ、それは寒いわけだ。

「寒くなれば雪が降るのはごく普通の自然現象だと思うが。……それにしても寒いな」

俺は布団に潜り込みながら口を動かす。

この程度の寒さならば大したことは無いが、暖かいことに越したことは無い。

……屈強な傭兵であろうと寒いのは嫌なのだ。

かくいう俺も寒いのは嫌いだ。もっとも蒸し暑いのも嫌いだが。

「何その無感動さは。あれ……雪が降っていて嬉しいとか思わない?」

「むう、しかしそう言われてもな……食品の保存が楽そうだな」

そう言葉にした瞬間、かなめの顔が落胆に包まれた。

何か悪いことでもしたのだろうか。

「はあ、ムードないなぁ。ほら、あたしが教えてあげるから外に行こ」

「いや、何も外で説明しなくてもいいのだが……」

「外じゃないとだーめ。ほーら着替える着替える!」

今更ながらなことだが……どうやら俺はかなめの尻に敷かれているらしい。








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