『夜桜』




「かなちゃん何してるのこんなところで?」

駅のホームのベンチで一人桜を見つめていたかなめを電車の中から見つけた恭子は
電車から降りてくるなりかなめに声をかけた。
かなめは桜から視線を声のした方へと向ける。

「恭子?どうしたの?」
「どうしたのってそれはあたしが先に聞いた質問だよ。」
「あ・・・・そっか。ごめん、ごめん。あたしは見ての通り桜を見てたの。」
「こんなところで?」
「っそ。こんなところで。」
「そう言う恭子はどうしたのよ。」
「あたし?あたしはちょっと寄り道してた帰り。そしたらかなちゃん見つけて、何してるのかな?って。」
「そっか。」

そして、また桜へと視線を戻す。

恭子はそんなかなめの様子を不思議そうに見てた。そして

「かなちゃんまだ帰らないの?」
「え?うん。もうちょっとここにいるわ。」
「そうなの?」
「うん。」
「あたしも一緒にいようか?」

恭子のその言葉にかなめは首を左右に振ると

「いいよ。遅くなったら家族の皆が心配するからさ。」
「ほんとに?」
「うん。あたしは大丈夫だから。」
「じゃ・・・・・わかった。」
「気をつけてね。」
「うん。かなちゃんもね。」

恭子は後ろ髪を引かれながらもすぐに来た電車に飛び乗り帰っていった。

そしてかなめはまた一人桜を見ていた。
そんなかなめの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

そう、この場所は2年まえ宗介と初めてきちんと会話をした場所。
はじめて相良宗介っという人物をわかる事が出来た場所。
そして2年前の今日がその日だった。


          今彼女の側には宗介はいない。
          ある日を境に姿を消してしまった。
          何も言わずただ忽然と姿を消した。


約束などしていない。
ただここにいれば宗介が戻ってきてくれるような気がした。
だからかなめは今日この場所を訪れ未だにここから離れずにいた。



恭子が行ってから何本かの電車が通り過ぎていった。
すっかり日がくれかなめはベンチから立ち上がり電車を待った。

反対側のホームに電車が止まる。
何事もなく電車はホームを去っていく。
その後にまるで電車が何かを置いていくように丁度かなめの前辺りに人が一人立っていた。

その姿を見てかなめは一瞬息を呑む。

「!!!!・・・・・」

かなめは走り出した。
力いっぱい反対側のホームへと走っていった。
その姿を見てその人物は危険を承知で線路へと飛び降り反対側のホームへ登ると
目の前にいたかなめを強く抱きしめた。

「千鳥・・・すまん。」

その言葉にかなめは首を左右に振りただただきつく抱きしめ返した。

「俺は・・・・」

何かを言いかけた言葉を遮るようにかなめはやっとの思いで言葉を吐き出す。

「ソースケ・・・・いい・・・もういいよ・・・・・あんたが今ここにいる・・・・それだけで。」

その言葉を口にするのがかなめは精一杯だった。



ソースケは抱きしめているかなめを体から離すと何も言わずかなめの唇へと自分のそれを重ねたのだった。




その様子を桜だけが2人を見ていたのだった。




(Fin)






   










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