ホワイトイルミネーション
「ねえーこのページ見て?」
「うん?」
「綺麗でしょう?雪の札幌。ネオンがたくさん大通り公園や駅前通に点くのよ。雪が降って、なんてロマンチックなの」とかなめが大きな溜息をついた。
「北海道って行ったことがないけれど、行ってみたいかも・・・」
装備を点検していた宗介が不思議そうな顔をしてかなめを見た。
「何かあったのか?熱でもあるのか?」
「うん。少し変かも・・」とかなめは呟いた。
「千鳥大丈夫か?」
すると、見たことのない優しい目を宗介に向けた。
「ねえー宗介、札幌に行こうか?」
「札幌?」
「うん、札幌・・・」
何かを考えているのか、無言になった。
「千鳥・・・・?千鳥?」
宗介の声が聞こえないのか、そのまま無言で部屋を出て行った。
今日のかなめはいつもと違っていた。
変なものでも食べたのだろうか。
かなめは恭子と二人並んで歩いていた。
「恭子・・あたし変な夢を見たよ」
「へエーどんな夢?」
「笑わないでよ・・あのね、宗介と二人で札幌にいるの。雪が降っていて・・なにか
・ ・・なにか・・嬉しかった」
「それは・・うふふ・・いいねえ」
「笑わないって言った・・のに」
「ねえーどうしてそんな夢見たか気が付いている?」
「え?」
「それはね・・・カナちゃん宗介のこと好きだからだよ」
「アハハ・・それはおもしろい!」と恭子の肩を勢いよく叩いた。
あの時、恭子と二人で入ったマックに一冊の本があった。誰かの忘れものらしいが何気なく見ると、
十二月の北海道の旅!なんて大きな文字がかなめの目に飛び込んできて、つい手に取って見た。
そしたらあんな綺麗な札幌の雪景色・・大通り公園の色とりどりの
ホワイトイルミネーション。そのまま悪いとは思ったけれど、持って帰って来た。
だから夢を見た・・・恭子ったら・・宗介のこと、好きだからだよ、なんて。
商店街をいつものように通り過ぎようとしてふっと歳末大売出しの貰ったくじの引き換え券があったのを思い出して、引き返した。
いつも通りの通学風景。
急にかなめが大きな声を出した。
「宗介!」
「ん、どうした?」
「商店街のくじ、一等を引いちゃった」
「そうか・・米か?」
「米・・って・・ちがう・・あのね・・うむうむ」
「聞こえないぞ・・はっきり言え」
「だからね・・札幌の宿泊券が・・・ンマイ・・うむうむ・・だから一緒に行こう?」
「札幌に?」
かなめは下を向き、モジモジしていた。
「何か・・よほど変なものを食べたのだな」
足早に行ってしまった。
「宗介・・宗介!てば」
もう少しで十二月。
期限が切れてしまう前に、どうしても札幌に行きたかった。
「だからね、そういう訳なの」
恭子は掃除の手を休めてかなめを見た。
「じつは、札幌にいとこのお姉さんがいるよ、大学生だけれど、ドラムやったりピアノ弾いたり、
絵描いたり、塾の先生やったり、内緒らしくって教えてくれないけれど、インター ネットでサイトをもっているらしい」
「へえ-おもしろいねえ」
「十二月にライブするらしい。カナちゃん行くのなら見て来てよ」
「それはいいねえー」
「なんだか分からないが、何故札幌にいるのだ」
「だって・・私に何かあったら心配でしょう?」
「ああ、やっと、やっと札幌!」
「ねえねえ、雪がこんなに沢山・・・・綺麗な街だねえー」
「何故こんなに寒いのだ」
「だって・・・冬だよ」
「キヤー見て・・・あの写真と同じ。」
「千鳥、落ち着け・・」
駅前通から見るホワイトイルミネーション、大通り公園のいくつものネオン塔。
雪がちらちら降ってきて、あの時見た夢は正夢だったと、かなめは思っていた。
「恭子のいとこのライブ、時間大丈夫か?」
「あ・・・大変!急がなければ。ねえ宗介―女の子がドラム叩くってカッコいいよね」
「ああー」
「どんなお姉さんかな・・・楽しみ」
「だけど、変わった名前だなあー」
「クロちゃん?・・そうだね。早く会いたい。急ごう」
どんな演奏するのだろう。
一日目の札幌の夜はこうして過ぎようとしていた。
end
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