『嘘つきな唇』






一瞬にして空気が凍りついた。

それは彼女のたった一言から始まった。
わざわざテッサがかなめに会いに来たのはあることに決着をつけるためだった。



「私、相良さんのことが好きです。かなめさんに負けないくらい」


そう言った、テッサの視線は真っ直ぐかなめを見ていた。


しばらくの沈黙。
かなめは真っ向から言われなにも言い返せなかったのだ。

だが、しばらく考えかなめは口を開く。



「テッサ・・・・あたしはソースケのことなんかなんとも思ってないわ」
「本当に?」
「本当よ。あたしはまったくソースケのことなんか好きじゃない」

きっぱり言い切るかなめにテッサは告げる。


「私が相良さんとお付き合いしてもかなめさんは平気なんですね?」
「平気よ」
「嘘じゃないですね」
「えぇ」

だが、その心は大きく悲しみにあふれていた。


本当は宗介のことが好きだ。
出来たらずっと一緒にいたい。
誰にも取られたくない。
宗介に対する気持ちならば誰にもテッサニだって負けない
それには自信があった。


だが、かなめはこの言葉を口にすることは出来なかった。


大切な人を失いたくない
失ったときの悲しみを味わいたくない


その気持ちから本当のことが言えない。


そして、口にすればもうこの想いを止めることが出来ないからだ。




「じゃ、かなめさん、今ここであたしが相良さんに想いを伝えてもいいですか?」
「え!?」
「なんとも思っていないんでしたら私のこと応援してくれますよね?」


いってテッサは携帯を取り出し電話をかけ始めた。



「相良さんですか?はい、少しお時間いいですか?」

テッサの言葉だけがかなめの耳に入る。

「あの・・・・私相良さんに伝えたいことがあるんです。
ダメだとわかっていても伝えなきゃダメなんです。
はい・・・・はい・・・・・お時間は取らせません、えぇ・・・・」

言ってチラリとかなめを横目で見る。
そして、


「私・・・・・」

言いかけようとしたときかなめがテッサの言葉を遮った。

「待って・・・ちょっと待って・・・・・」

その言葉にテッサは「少し待ってください」とつげかなめへと返事をする。


「なんでしょうか?」

テッサの問いかけにかなめは一瞬躊躇するが大きく息を吸って吐くと同時に言う。


「テッサ、待って」
「何がですか?」
「今、ここで言わないで、あたし聞きたくない」
「それは私の告白ですか?それとも相良さんの返事ですか?」
「それは・・・・」
「だったら、やめません。かなめさんが本当のことを言ってくれるなら
考えますが」


真っ直ぐそらさず見つめるテッサの視線は本気だった。
その時もう、これ以上嘘はつけないとかなめは思った。


「ソースケの返事よ。あたしはソースケが好き。ずっとずっと好き
だけど、この気持ちを認めたくなかったの。認めてしまうともう止まらなくなるから」


その瞬間かなめの背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「それは本当か?」
「ソースケ!?なんであんたがここに!テッサもかして・・・」

だが、宗介からテッサへと視線をもどした時にはもうそこにはテッサの姿はなかった。


「なに!?どういうこと?」
「俺もわからない。ただ、俺はテッサが君に会いに行くのについてきて欲しいと
言われここまで着いてきた。まさかこんなことになるとは思っても居なかった」
「いや・・・あれは・・・・・」
「嘘だとは言わせない。もう、君の唇は嘘はつけない」

その瞬間かなめは宗介に引き寄せられる。

「俺も君が好きだ。誰にも渡したくない」

優しく囁かれる言葉にかなめは耳を傾ける。



もう、自分は嘘をつく必要がなくなった
このためにわざわざテッサが力を貸してくれたんだ。
かなめは心からテッサに感謝した。


「あたしもよ・・・ソースケずっと好きだった」


宗介と出会いずっと嘘をつき続けてきた唇。
そこから本当の気持ちがあふれだす。




開放された想いはもうとめることは出来ない。
嘘をつく必要がなくなった唇はとめどなく宗介に対する気持ちをあふれ出させた。






Fin









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