オジ様の来日 〜東京観光編

作:アリマサ

前回
のあらすじ
宗介の授業参観に、宗介の学業を見ようとマデューカスとカリ ーニンが東京に来日した。
そして苦難の末に無事に終わったが、二人はすぐには帰らずに 、宗介のセーフハウスに泊まっていくのだった



セーフハウス内に、相良宗介が鎮座し、その前にはマデューカスとカリーニンが東京内地図を広げて議論していた

「私は日本の商品の視察に行こうと思う。ショッピングとして有名な所に行ってみないかね」

マデューカスが、首都内の有名な地区を睨んで言った

「東京の象徴としてはやはり東京タワーでしょう。一度は行ってみるべきかと」

そこでマデューカスが、カリーニンを向いた

「そういえば少佐は、クルツ・ウェーバーに助言を仰いだそうだが、なにかオススメスポットはあるのかね」

「ダメですな。彼は下町好きのようでして、行きつけのおでん屋とかクラブ程度のものです」

それを聞いてマデューカスは、軽く首を振った

「観光するのにそんな所しか勧めれんとは。役に立たん男だ」

「あと、絶好の狙撃ポイントはどこかを延々と語ろうとしたので、ヘッドバッドをくらわせておきました」

そこでおそるおそる、宗介が挙手した

「なにかね、軍曹」

発言権を得て、宗介はゆっくりと言った

「明日の東京案内のことですが、恐縮ながら俺だけでは中佐殿と少佐殿を満足させれる自信がありません。
つきましては、千鳥の協力を要請したいのですが」

「却下だ」

ばっさりとマデューカスがその提案を切り捨てた

「な、なぜでしょうか」

「……軍曹。前々から思ってたことだが。最近のお前はミス・チドリの好意に甘えすぎだ」

「――!」

「確かにこの日本ではお前は把握していない部分が多い。
しかし、だからといってすぐに千鳥に助言を乞うのは感心せんな。
確かにミス・チドリは世話好きでおせっかいな所もあるが、最近のお前はそれを受け入れるようになってしまっている」

「…………」

宗介は、それを否定することはできなかった

「別に私は完璧は求めていない。軍曹。貴様のできる範囲でやれるだけやってみろ」

「中佐殿……」

ちらりとカリーニンの方を見ると、彼も無言でこくんとうなずいた

「分かりました。相良宗介軍曹、全力を持って東京案内役を果たさせていただきます」

かくして明日は、宗介一人で案内をすることとなった

「さて。そろそろ就寝するとしようか」

「そうですな」

「軍曹。私の寝床に案内しろ」

「はっ」

宗介はマデューカスを連れて寝室に向かい、そこのベッドの――下の隙間に案内した

「さあどうぞ、中佐殿」

「…………」

ベッドの下のわずかな隙間。そこにどうぞ、と何度も手で場所を示す

「少佐」

「はっ」

そしてマデューカスは、カリーニンとともに、宗介をそのベッドの下の隙間に無理矢理押し込み、その尻を足でぐりぐり蹴り押していく

「な、なぜですか中佐殿っ。ベッドの下は襲撃者が侵入してもすぐには発見されにくい絶好の場所であり――」

だが宗介の言葉にも問答無用に、身体を二つに折った無理な体勢で頭からベッドの下に押し込まれてしまった

「…………」

「さてと。では少佐。我々は布団を敷いて寝るとしようか」

「そうですな」

二人はベッドの上の布団と、押入れにあった布団を隣の部屋に運び、丁寧に敷いていく

「この部屋に目覚ましは……無いのか。まったく、日常用品の物くらい買い揃えれんとは」

「中佐。わたしの腕時計のアラーム機能を使いましょう。ええと、七時起床でよろしいですか」

「六時半だ」

「了解しました。セット完了」

「就寝するぞ」

すると、ものの数秒とたたずに、彼らは深い眠りについてみせたのだった



翌日

六時半に時計のアラームが鳴ると、五秒とたたずにむくりと起き上がり、てきぱきと布団をたたむ

そして冷蔵庫にあったわずかなコッペパンとレーションとコーヒーを用意したところで、隣の部屋から呻き声が聞こえてきた

マデューカスが隣の部屋とのしきりを開けると、ベッドのわずかな隙間に押し込められたままの宗介が助けを求めていた

「申し訳ありませんが、この体勢では自力で脱出できません。出していただけませんでしょうか」

「ほう。その体勢のまま一晩耐えたのは褒めてやろう。
だが、上官の手を煩わせようとは厚かましいと思わんかね。どれ、貴様の処理なら手伝ってやるとしよう」

するとマデューカスは、拳銃の撃鉄をジャキッとスライドさせた

「中佐殿……?」

「三秒、祈る間をやろう。アッサラーム、スリー、ツー」

ワン、と同時に、宗介の上のベッドが跳ね飛んで、鈍い音を立てて横に倒れた

宗介が火事場の馬鹿力というやつで、背中の筋力でベッドを押しのけたのだろう

「できるではないか」

「……そのようです」

だが宗介の顔面は、変な色の汗でいっぱいだった



そして三人で朝食を済ませ、さっそく観光に赴くことにした

「まずは日本のシンボル、東京タワーに行くとしよう」

「了解しました」

すぐさま宗介は地図と東京タワーの姿形を調べ上げ、案内の準備にかかった

「では、下で車を用意します」

「待ちたまえ。日本では未成年は運転禁止ということらしい。警察事は面倒でな、電車で行くぞ」

「りょ、了解しました」

かくして三人は、日本の電車に乗って東京タワーに向かうことになったわけだが。

電車内での気分悪そうな青年と、それを挟むようにしてむっすりと座り込むオジ様の妙な威圧感に、
近くの乗客はなぜかこそこそと離れていた



「ほう、これが東京タワーか。まあそこそこに高い造形物だな」

「中佐殿。調べたところ、東京タワーは展望台となっており、中に入れるようです」

「ほう。では入ってみるとしよう」

東京タワーの敷地に入り、入場料を払ってタワーのゲートをくぐる

そしてエレベーターで上がって、彼らはタワーの高い位置にある空間に出た

「中にいくつか店もあるのだな」

「あのガラス窓から外を見下ろすわけか」

マデューカスとカリーニンは、このときは普通の観光客になっていた

三人は、外側に向かって、ガラス窓越しに下を見下ろす

そこにはいくつかの高いビルと車、そして人が小さく蠢いているように見えた

それをじっと見下ろしていたマデューカスが、ぽつりと漏らす

「見ろ。人がゴミのようだ」

「……中佐殿。それはなんですか?」

宗介が、中佐の放った一言について聞いてみた

「む。……私は昔から潜水艦乗りだった。海から下の世界ばかり見てきたわけだ。
だが、若いころは空軍に憧れていた時もあった」

「そうなのですか」

「わたしも初耳ですな」

「軍学校の同期は、空軍の道を進む者がほとんどだった。
そして久々に会って話を聞いたときに、空から地上を見下ろすのはいかがなものか、と聞いてみたところ、
先ほどの台詞を言うのが爽快なのだそうだ。意味はよく分からんがな」

「そうでしたか。わたしにも意味はよく分かりませんが、中佐にはお似合いの言葉のように思えます」

「自分も同感であります」

「も、持ち上げるんじゃない。まったく……」

だが、どこかまんざらでもないようだった

そして東京タワーは、適当に双眼鏡から見下ろし、お土産を宗介に支払わせて適度に購入し、見学を終えた



「次はどうしますか?」

「もちろん、ショッピングだ」







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