『ただ、君に会いたくて』





任務先かたメリダ島へ帰る飛行機の中、宗介は黙ってうつむいたまま足元をじっと見ていた。

「ソースケ?あんた大丈夫?」

心配そうに聞くマオに宗介はな驚いた顔で「なにがだ?」っと聞き返す。

「なにがだ?ってあんた自分で自分のこと気づいてないの?
 ここ最近ずっとへんよ?今日だってもう少しのところで大事故になりかねないところだったし」
「あぁ・・・・」そのことか。と宗介はマオから視線をそらす。

「あぁってね・・・・ソースケあんた・・・・」

それで済むとおもってるの?といおうとしたとき宗介が言葉をさえぎる。

「すまなかった。ちょっと考え事をしててな」
「考え事って任務中にするようなことなの」
「・・・・・・そういうわけでは―――――――」

申し訳なさそうに告げる宗介にマオはこれ以上きついことは言えなくなる。

「ったく・・・・・いくら任務が重なって1ヶ月以上も働き尽くめだからってちゃんとしてよ、
 わかってるの?ソースケ」
「あぁ・・・・・」

やはりなんとなく上の空で返事をする宗介にマオはこりゃダメだ・・・っとため息をつく。

その時、二人の会話をだまって聞いていたクルツが突然席をだった。


「ちょっと何処へ行くのよ」


マオが今、お願いだから宗介と二人きりにしないでっと訴えるような目でクルツを見る。
今、この状況で宗介と二人きりにされてしまったら自分まで気がめいってしまいそうだったからだ。

「ちょっと用をたしてくるんだよ。
 こればかりはここでするわけにはいかないだろ?なんなら一緒に来る?」

ニヤリと笑いながら話すクルツにマオは
「バカなこと言ってんじゃないの!!だったらささっと行ってきな!」
っと声を張り上げた。

「ったくなんだよ・・・呼び止めたのは姐さんだろ!!」とクルツは言葉を吐き捨てるととっとと出て行った。




二人きりのその場所はかなり重い空気が流れていた。

マオはどうしたものかと頭を抱える。
宗介がなぜこんなに暗いのかマオには理由がわかっていた。






原因は1ヶ月以上も任務で宗介を足止めしていること。





はじめは1週間の予定だった。
それが2週間になり3週間になり・・・・・最後には1ヶ月になってしまった。
その間、何度も何度もかなめに連絡を入れる宗介。
そのたびにごとに宗介の表情はだんだんと最悪へと変わっていった。
そして、最後の連絡を入れたとききっとこういわれたのだろう「二度と帰ってくるな!」っと。
その時の宗介の顔は血色のない死人のような表情だった。




そして今、宗介はまるで生気を失われたような表情している。
そんな顔をマオは見ていたくなかったのだ。






それからしばらくしてクルツが戻ってきた。
そして、持っていた何かを宗介へと投げつける。


「な・・・・なんだ!?」


突然、ズシリと重いものを投げつけられ宗介はあわて、驚く。

「ったく・・・そんなしけた面されてたらこっちが迷惑なんだよ。
 任務もまともに出来ないし。なさけねーったりゃありゃしねーよ」
「―――――すまん」
「だれも、謝ってくれなんていってねーよ!ったく。
 お前なぁーこんなところでそんな風に沈んでる暇があるのならとっととそれつけて飛び降りろ!!」
「―――――飛び降りる?」

宗介は足元に落ちているたった今クルツが投げつけたそれを手に取る。

「これは―――――」

見て驚きクルツに言う。

「こんなものどうする」
「だからさっきも言っただろ!つけて 飛 び 降 り ろ !!」
「しかし、こんなところからでは―――――」
「ったく、お前って奴は!!何も聞いてねぇだろ。
 今回の任務はどこだった?どのルートで現地へ行きどのルートで帰ってる」

言われてようやく気づく。

「あ・・・・・だがしかし、かなり上空を―――――それに、真上を飛んでいるわけではない」
「だから俺が今、パイロットに話しつけてきてやったんだろうが!!」
「なんだと?」
「聞いてねぇーのかよ。俺が今、話しつけて日本の東京上空を飛んでもらってるんだよ」
「しかし、そんなことをすれば・・・・・」
「大丈夫だ。なんとかなる」
「しかし―――――」
「しかし、もなにもねぇ!!うまくいったから今、東京の上空を高度低めに飛んでるんだろが!!
 ったく、そんなくだらねぇーこと言ってないでとっとと行け!!
 お前のそんな面いつまでも見ていたくねーんだよ!!」

すると宗介は「すまない」とつげパラシュートをつける。

「そうだ、ただし言っとくが何処に降りれるかわからねーぞ。うまく降りろよ」
「あぁ、大丈夫だ任せておけ」
「何が任せておけだ、急に顔色なんかよくなりやがって」
「では、行く。世話をかけたな」


そして宗介は扉を開ける。


降りる際、宗介はクルツに礼を言った。


「このお礼は必ずする」
「あたりめーだ、倍で返せよ、倍で」
「了解した」


宗介は気持ちよく飛行機から降り立った。





「クルツ、ほんとに話つけたの?」

不安そうに尋ねるマオにクルツは笑いながら言った。

「いいや、全然。強引に頼んだ」
「やっぱりね。いいわよ、あたしも一緒にあやまってあげるわ」
「すまねーな、姐さん」


そして、落下していく宗介をクルツとマオは見送った。





丁度、どこかの河川敷についた宗介はそのままバラシュートを脱ぎ捨て走り出す。
息の続く限り体力の限界まで振り絞り。









無事にかなめのマンションへたどり着いた時にはすでに夜中だった。
悪いと思いながらも宗介はインターホンを押す。


『はい』

インターホン越しに眠そうな声が聞こえる。

「こんな夜遅くにすまない。俺だ」

予想もしてなかった声に驚きかなめはあわててドアを開ける。

「どうしたの、こんな時間に!!」
「すまない。飛んで帰ってきた」
「どうやって」
「飛行機からパラシュートで降りてきた」
「はぁ?」

あまりにもとんでもない宗介の行動にかなめはあきれる。

「降りてどうしたの」
「そのまま走ってきた。降りるときに荷物を何ももったなかったから車や電車にも乗れなかった」
「何処から走ってきたの」
「わからない。しかし降りたのは多摩川の河川敷だ。
 河をたどってこちらまで来た、かなりの距離だっただな」
「信じられない」
「信じてもらえなくてもいい。君と1ヶ月も会えないなんて俺には耐えられなかった。
 だから、降りた後必死で走ってきた」
「何ですって!?そこまでしなくても連絡くれれば」
「そんなことはまったく考えなかった。俺は、ただ君に会いたくてそれだけだった」

今、とんでもない言葉を聞いたのではないかとかなめは驚く。
しかしかなめはあくまでも冷静に返事をする。

「ほんとあんたって筋金入りのバカよね。いいわ、入りなさいよ」

かなめは宗介を部屋へ入れると前を歩き出す。

「怒ってないのか?」
「なにがよ」
「何度も、何度も、約束をすっぽかして」

足を止め背後に居る宗介に少しだけ顔が見えるように振り向くと言った。

「はじめは怒ったわよ。でも、仕方ないでしょ?仕事なんだから」
「ほんとすまなかった」
「もういいわよ」

いつもと変わらないかなめの笑顔が宗介へと向けられる。

「ほら、こんなところで立ち話もなんだから早く部屋に入ろ。
 残り物だけどシチューがあるからそれ温めてあげるから」
「すまない」
「あ!そのまえに、シャワーで汗を流しなさい」
「いいのか?」
「今日は特別よ」

そして、二人はリビングへと入る。




シャワーを上がった宗介はソファーに座りかなめが食事の用意をしてくれるのを待っていた。




   やはり、ここは落ち着く。




宗介はほんの数時間前戦っていたことを忘れるかのように安心していた。





「ソースケ!お待たせ、出来たわよ。ロールパンもあったから・・・・・って。あぁーーあ・・・・ったく」

宗介は疲れたのかソファーの上で「すぅーすぅー」と寝息を立てていた。

「ったく・・・ほんとバカなんだから。
 何処から走ってきたか知らないけどいくら体力のあるソースケでもそりゃ、疲れるわよね」


かなめは毛布を出すと宗介へとかける。


「でも、ありがとう。急いで帰ってきてくれて」


かなめは宗介の頬に優しくキスをすると温めたシチューとロールパンを
ソファーの前のテーブルに置き、一番小さな明かりだけを灯し自室へと戻っていった。


それから数時間後目覚めた宗介は冷え切ってしまった食事を
そのまま食べきるとすぐにまた眠ったのだった。







かなめのマンションでだけは安心し、熟睡できるのだと。









Fin











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