『すれちがう絆ー後編ー』




――――東京

  かなめのマンション





今現在この部屋には宗介とかなめが無言で食事を進めていた。



宗介から帰るコールがあってしばらくすると
いつもどおり何食わぬ顔で宗介がやってきた。


あれだけ『会いたい』『声が聞きたい』『笑顔が見たい』
などといっておきながらここへやってきたときはいつもと変わらず
普通にやってきた。

正直かなめは玄関を開けた瞬間抱きしめられると思っていたのだ。
それぐらいの覚悟はできていたのだ。
だが、かなめの期待裏切られ

「ただいま、入っていいか?」

のそれだけだった。



しばらくはもしかしたら何かを言ってくれるかも
なにかしてくれるかも

とそんな期待をしていたもののまったく何をすることもいうこともなく
いつもとかわらな維持間を過ごしていた。




ちょっと期待を裏切られかなめは物足りなさを感じていた。








 なによ・・・・
 久しぶりの再会なのに
 あれだけ会いたいって言ってたんだから
 なにかこう・・・・すればいいじゃない・・・



宗介の顔をチラチラと見ながらかなめは食事を進めていた。
その行動に当たり前だが宗介は気づく。



「どうかしたか?」
「え・・・・ううん、なにも」
「だったらいいが」
「そういう、宗介は何か話とかないの?」
「俺か?俺は別にない」
「そっか・・・・」

  なによ・・・・
  わかっているけど
  あんたにははじめから何も期待しちゃいないけど
  あたしばっかりドキドキして
  なにか期待してバカみたいじゃない


かなめは口には出さないがだんだんと寂しくなってきた。




「ソースケこれからどうするの?」
「どうするのとは?」
「すぐに帰るの?」
「帰るとは?マンションか?」
「ちがう、ミスリルの基地」

食器を運びながら問いかける。

「いや、しばらくは帰らない。休みをもらえた」
「っそ」

そして、かなめは返事を返すと食器を洗い出した。

「じゃ、これからは」
「これからとは?」
「もう、マンションに帰るの?」

  宗介が何も言わないなにも行動に起こさないならあたしから話をふってやる。


そう思いかなめは話を進める。



「もしさ・・・・もし、急がないんだったら・・・・・・」



その時だった。
背後からふわっと腰に手を回され抱きしめられた。


  え・・・・なに?
  なにが起こっているの?


「ソースケ・・・・!?ど・・・・どうしたのよ」


かなめは驚き手を止める。

すると耳元で宗介が囁く。



「ずっとこうやって抱きしめたかった・・・・」

宗介に腕に力がこもる。

「抱きしめて君の声を近くで感じたかった」


宗介の言葉にかなめの心臓は高鳴る。
この音が宗介にまで聞こえるのではないかと思うくらいに。


だが、それはかなめではなく宗介も同じだった。


宗介の腕からかすかに伝わる小さな振るえ。
その時かなめは宗介も同じだったことに気づいた。



電話やメールではいくらだって言える。
だけど、本人を目の前にしたら思っていたことやりたかったことなど
体が竦んで上手く行動に起こせない。
それは自分も同じだ。
いつもメールをもらって電話をもらって喜んで、一人で勝手に帰ってきたときの
宗介の行動に期待して。
何もしてくれないと少しイライラして。
だったら、自分も出来るのかとおもったら大きな間違いだ。
決して自分からは行動は起こさないだろう。
だからこそかなめはこの宗介の行動がかなり勇気がいったことに気づく。




お互い気持ちが通じたからといって今までの関係がそう簡単に変わるわけがない。
少しずつ少しずつ進歩していけばいいんだ。
その一歩が宗介のメールで
そして2歩目が優しく抱きしめてくれる。


これだけでかなめは充分幸せだった。




「ソースケ」
「なんだ?」

耳元にかすかに宗介の息が触れる。
こそばいがそれがすごく心地いい。

「少しだけあっちで待っててよ」
「あぁ・・・」
「すぐに済ますから」
「わかった・・・」

返事はするものの宗介はかなめを抱きしめた腕を離さない。
まるで、子供のように。


「ソースケ・・・・ね?会いたかったのはあんただけじゃないあたしも
なんだから」


かなめは言って宗介の腕を解いた。


「じゃ、待っている」
「うん」


そして、宗介はだまってソファーへと座った。






長い時間かけようやく繋がった絆。
すれ違ってすれ違ってやっと結びついた。

他の人よりも何倍も何倍もかかった時間。
これからだってどれだけ時間がかかってもいいだろう。





ゆっくり、ゆっくりこの絆を深めていけばいい。






かなめはいつものように食後のコーヒーを手に取ると宗介の傍へ向かった。


だが、少し違ったのは
座ったときいつもは離れていた宗介とかなめの距離がなくなったことだ。

ピッタリと寄り添い
かなめは宗介の話を聞いたのだった。









Fin



  







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