『 すれ違う絆 』





傭兵という特殊な人生を送っていた相良宗介。ある任務をきっかけに少しずつ変化を遂げた。

どんな変化かと聞かれれば…百人が百人全員同じ答えを出すのではないだろうか。



「君が好きだ…だから、これからもずっと側にいたい」



彼が一番変わった人を想うその心。きっかけとなったある任務、すなわち東京での少女の護衛…。

その少女こそ彼が想いを寄せる相手…千鳥かなめである。



「ソースケの大嘘つき!!」



彼が彼の想いをかなめ本人に伝えた時…かなめ自身も宗介に同じ気持ちを抱いていて、
はれて二人恋人同士となれたのだが…。

傭兵という彼の立場が二人の幸せを長続きさせてはくれなかった。



「何が『側にいたい』…よ! そう言ったすぐ翌日にはもういないじゃないの!!」



寝室で枕に八つ当たりをするかなめ。枕をボフボフと叩いているのだが、その手は力ない。



「そりゃあ…両想いになれた後どういう風に話せばいいのか分かんないけどさ…
 いや今まで通りにしていればいいんだろうけど…でもなんかこう恥ずかしいというか照れ臭いというかさ…
 ってあたし一人で何言ってんの…?」



今まで意地を張っていた事の方が多かったせいか、嬉しいはずなのになかなか素直に喜べないらしい。

恐らく恭子らに寂しいのではないかと聞かれると間違いなくそんな事はないと答えるだろう。

それでもかなめも女の子なので寂しくないわけがなかった。





宗介が所属しているミスリルの秘密基地は東京からはるか南の海の無人島にある。

そのため一度無効に行ってしまったら最低でも三日は帰る事が出来ない。

また、いざ帰れるとなっても何時間もかけなければ帰れないほど遠い。



「あ、またメール入ってる…」



おかげさまでかなめに大嘘つきと言われても無理はないのだ。

だが宗介もそれを気にしているようである。



「さっきメール来たのって一時間前じゃない…忙しくないのかしら…」



今までなら帰る時にその連絡の電話しかしていなかったというのに、
今回は少しでも時間が出来ればメールをしているらしい。



「でも聞いてくる事は対した事ないのよね…」



かなめもこのメールが嬉しくないわけではない。
少しでも時間が取れれば移動中でもメールを送ってくれる事を思うとやはり嬉しさが込み上げてくる。

しかし時間のない中でのメールなので送れる内容は限られてしまう。



『問題はないか?』

『今何をしている?』

『まだ帰れそうにない』



などなど…。

気にはしていても聞く内容は今までと何ら変わりない。

それでもかなめはちゃんと返事をした。

聞いてくる事がひと言なのはゆっくり打っている暇がないのだろうと思い、かなめもひと言で返事をした。

そっけなくならないように絵文字も使って…。

そんなやりとりがその後も数回続いた。そしてあるメールをきっかけに宗介の様子が変わった。



『早く帰りたい』



このメールが届いてからというもの…最低でも一時間に一回のメールが二十分…
あるいは三十分に一回はくるようになったのだ。

しかも…。



『君の作った御飯が食べたい』



これはまあいいだろう。
だがこのように宗介が自分から食べたいなどと言う事は過去に一回あったかなかったかその位である。

ある意味これもめずらしいのだが…問題はこの後だ。



『早く逢いたい』

『直接声が聞きたい』

『君の笑顔が見たい』



など…かなめが赤面してしまうには充分すぎる内容がガンガン届くようになったのだ。



そしてとうとう…。



「演習も報告書も終わらせた。これから帰るので二一〇〇時にはそちらに着く。
 荷物を置いたら君の部屋に行ってもいいだろうか?」

「え、あ…うん…平気だけど…」

「そうか…。遅いのにすまない。ではまた」

「うん…気をつけてね」



告白されてから今日まで直接逢えはしなかったがかれこれ五日…。

突然積極的になった宗介に戸惑うかなめ。

果たして彼が帰って来たら一体どうなるのであろうか…?










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