『幸せとは?』


ある鬱陶しい雨が降る休日。千鳥かなめの家では…。

ガチャ

「買ってきたぞ、かなめ」
「ごめんね、せっかくの休みなのに…」
「気にするな、君との仲だ。これくらいの行いは当然だ」
「あ、ありがと…」
風邪の熱とは関係なく、かなめの整った顔は赤らんだ。

宗介とかなめは数週間前から付き合い始めた。高校を卒業し、今は
大学に通う毎日を二人は平和に送っている。ちなみに同居もして
いたりする。

「今から準備する、待っていろ」
そういうと宗介は台所へ向かい、コンロを使い始めた。
宗介の買ってきた物とは、風邪の時の定番である『おかゆ』である。

数分後、おかゆが完成し宗介が運んできた。
「食べれるか?」
「…うん」
そういっても起きようとしない。
「仕方ない、俺が手伝う」
言葉は事務的だったが、宗介の顔は嬉しそうだ。
「ありがと」
(やった〜、ソースケに食べさせてもらえるっ!)
一方のかなめも心の中ではガッツポーズをとっていたりする。

宗介は無言のままかなめの前にスプーンを持ってくる。
「ソースケ、普通は無言のままスプーンを持って来ないわよ…」
かなめの言葉にはいつものキレが無く、かなめらしくない。
「ではどうする?俺には分らん」
「そーいう時はね、『あーん』って相手に言うのよ…」
少し恥ずかしそうに宗介は言う。
「あ、あーん…」

ぱく
もぐもぐ

「どうだ?うまいか?コンビニのだが…」
「…おいしいよ、ソースケが食べさせてくれたから」
「そういう、ものなのか?」
お互いに赤面し、少しの沈黙が訪れる。
かなめは照れ隠しに
「はやく、次っ」
と宗介に要求した。
「あーん」

ぱく
もぐもぐ

「うん、やっぱり美味しいわよ?」
「そうなのか?」
「そういうものなの。好きな人に食べさせてもらえば!」
「むぅ…。どういうものなのか、俺にも実感させてくれないか?」
「え……。良いわよ、ほら、あーん」

パク
モグモグ

「むぅ。俺にはよく分らないな…。残念だ…」
「風邪ひかないと分らないのかな?その時に私が教えてあげる!」
「そうだな。その時は頼む。…あーん」

ぱく
もぐもぐ

「これで最後だ」
「ありがと、ソースケ…」
そういうとかなめはお礼に宗介の顔の傷にキスをした。
「も、問題無い」
照れ隠しに宗介はそそくさとお椀を持って台所へと戻った。
(ふぅ、素直じゃないのね。でも、そこがまた良いのよね)
かなめはそんな事を思いつつ、心地よい眠りについた。

宗介は食器を片付け、かなめの居る寝室へと戻った。すると、寝息が聞こえてきた。
「寝ているのか…」
ずれたふとんを直し、宗介は自分がここ最近<ミスリル>の任務で寝ていない事に
気が付いた。少し考えた後、かなめの隣で宗介は寝る事にした。
「お休み、かなめ…」
横になり宗介はふとこんな事を思った。
(これこそが幸せなのかもしれないな…)
その後かなめの後を追うように、宗介も眠りについた。







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