セーター



木枯らしの舞う秋空の下、手ぶらのかなめと買い物袋を持った宗介が歩いていた。

「失敗したわ……」
かなめはそう言いながら、寒そうに腕組をした。
「何がだ?」
「服選びよ」
自分の服をかなめは指差した。
薄着というほどではないが、今日の気候にあった暖かそうな服装ではない。
「セーターなどは無かったのか?」
「穴空いちゃってて……」
がっくりとかなめは肩を落とした。
「そうか、では自分で作ればいいのではないか?」
君は手先が器用だからな、と宗介は付け加えた。
「うーん、それもいいかもしれないわね」
何やら指折り数えながらかなめはブツブツと呟いている。

「そうだ!ソースケ、セーターいる?」
出し抜けにかなめは宗介に提案した。
「防寒着はあったほうが有り難いな」
素っ気無く宗介は言った。
「違う違う。そーいうことじゃなくって」
「ではどういうことなのだ?」
全く話の筋を読めない宗介は、かなめに説明を求めた。
「あたしがセーター作ってあげるから、いるかってことよ」
思い掛けない誘いに宗介はしばし沈黙する。
「いるの?いらないの?」
「もちろん欲しいには欲しいが……」
「先約があるとか?」
宗介の顔をかなめは覗き込む。疑いを持った目で。
「そ、そういう事は無い」
「冗談だって」
そう言いつつ、かなめは笑みを零した。
「君の冗談は質が悪いな……」
宗介はボソリと呟いたが、幸いかなめの耳には届かなかった。
「で、いるの?」
「あぁ、ぜひとも作ってもらいたいんだが。良いのか?」
「私に任せときなさいっ」
ポンッとかなめは自分の胸を叩いた。
そんなかなめの様子を見て宗介は微笑を浮かべていた。

2週間後、かなめと宗介はセーターを着て買い物に出かけていた。お揃いの手製セーターを着て。
















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