フルメタ昔話 三匹の子豚
作:アリマサ


メリダ島という小さな島に、ミスリル一家という豚の家族がおりました

その一家の母テッサは、金食い虫の三匹の子豚に悩まされていました
その三匹の子豚とは、クルーゾー、クルツ、マオといいます

「うおー、アニメグッズー!」
「女の秘蔵写真集ー!」
「肉ー! 酒ー!」

ついに耐え切れなくなって、母テッサはこの三匹の子豚をぺいっと追い出しました
「うわーん。家に入れとくれー」
三匹の子豚は必死にお願いしますが、テッサはしかりつけました
「あなたたちのせいで、ミスリルの経済は崖っぷちです。もう、面倒は見ません。いいですか? これからは、自分で家を建てて暮らしてください」

こうして、三匹の子豚は自分でそれぞれに家を建てることになったのです



一匹目の豚、クルツは面倒臭そうにぶつぶつと文句を言いながら、わらで家をつくりました
わらを束ねて、上にかぶせるだけという、手軽な家ができあがると、クルツはその中でしばらく寝そべっていました

すると、その家に不審な影が近づいてきます
「……ん? なんだ?」
豚の嗅覚で、近づく気配を感じ取ったクルツは家を出て、近くを見回しました
すると、森の奥から狼の姿をした相良宗介が歩いてきます
「……お前が狼かよ」
「うむ。犬ソースケならぬ、狼ソースケという安直な考えで俺が狼ということになったらしい」
「ああ、そう。で、何の用だよ?」
「俺の任務は、お前たち三匹の豚どもの家を破壊して、襲うことだ」
「なっ、なんだと? 苦労して作った家を壊すってのか」
「そうだ。それが俺のやるべきこと。……しかし」
狼はクルツの造った家を見て、鼻で笑いました
「なんとも言いようのない、手抜きな家だな。いかにもクルツらしい」
それを聞いて、さすがのクルツも目を吊り上げました
「うっ、うるせー! かったりぃんだよ、こんなこと」

クルツの言葉を無視し、宗介はロケットランチャーを取り出して構え、あっさりとクルツの家を吹き飛ばしました
「うっ、うわあああぁぁ。コイツ、マジにやりやがった」
涙目になって頭をかかえるクルツですが、宗介はいささか満足気味にロケットランチャーをしまい直します
「さて、これからゆっくりと襲わせてもらうとするか」
「ちっ、ちくしょおおおぉぉっ」
クルツは壊れた家を捨てて、クルーゾーの家に向かって逃げ出しました



「ふむ……こんなものだろう……」
二匹目の豚、クルーゾーはさすが堅実というか、しっかりとした家を建てました
「防弾壁も問題ない。これでようやく、安心して住めるな」

すると、家にチャイムが鳴りました
「ん……。誰だ?」
インターホンについた小さな穴を覗き込むと、クルツの必死な顔が見えました
「……帰れ」
「入れてくれよっ!! 頼む、入れてくれ!」
「なぜ、せっかくの新居をお前と過ごさねばならんのだ。お断りだ」
「入れねえと、ミスリルの奴ら全員にアニオタってことバラすぞっ!!」
「き、貴様。……入れ」
ぎいっと重い扉を開けてやると、クルツが中に入って、安堵のため息をつきます

「一体なんだというのだ。それぞれが独自に家を建てて、別々に暮らすことにしただろう。自分の家はどうした?」
「それが、ソースケの野郎がオレの家を吹き飛ばしやがった。あいつはここの家も壊しに来るぞ」
「……どういうことだ? 詳しく説明しろ」

それからクルツの説明を聞くと、
「なるほど、サガラの奴がな……。大方、お前の家は簡単に吹き飛ばせる家だったのだろう?」
「うっ、うるせーよ。それより、ここも壊しに来るんだぜ? どーすんだよ」
「心配ない。お前のと違って、俺はしっかりと造り上げた。重火器でさえ、びくともしない頑丈な材質。堅牢な構造。いくらサガラといえど、これには手出しもできまい」
「そっ、そうか。よかった、へへ」
クルツも自信満々なクルーゾーの言葉を聞いて、安心したようです

すると、外から宗介が歩いてくるのが見えてきました
「おっ、ソースケの野郎、来やがった」
クルツとクルーゾーは外に出て、宗介の前に立ちはだかりました
「見ろ、サガラ。これが俺の建てた家だ。果たして貴様ごときに壊すことができるかな」
「…………」
その挑発に乗ったのか、宗介はロケットランチャーを取り出し、構えました
その武器を見ると、やはりクルツは心配になってきます
「おいおい、本当に大丈夫かよ」
「ふん。見ていろ」
宗介が、ロケット弾を放ちました。それは見事にクルーゾーの家に命中したのですが……なんと、頑丈な壁の前には傷ひとつもつきませんでした
「むう……」
意外な頑丈さに、宗介は一汗流しました

「どうだあっ、見たか、わはははは!」
クルツとクルーゾーの二人は、戸惑う宗介の前で踊りだしました
すると、宗介が森の奥へと戻っていきます
「おーぅ、尻尾巻いて逃げやがったぜ。はははは」
あまりに嬉しいのか、二人ともしばらく手をつないで喜びのダンスを踊っていました

ズシイイン ズシイイン

「……ん?」
踊ってる最中に、やけに騒がしい足音が森から響いてきました
すると、森の奥から、ぬうっとアーバレストが姿を現してきました
「げえっ!!」
そして巨大なAS・アーバレストは、クルーゾーの家に近づき、至近距離からAS専用のどでかいバズーカ砲をぶっ放しました

どおおおぉぉん

言うまでもなく、クルーゾーの家はこれでもかってくらいに吹き飛ばされ、粉々になりました
「ふ……しょせんこの程度か」
宗介がふっと笑ってそう言い捨てました
「あ……あの野郎、完全に悪役になりきっていやがる」
「お……俺の家が……。普通、ここまでやるか?」
呆然とする二人。
それから、悔し涙を流して、その場を逃げました
「ちっ、ちくしょおおぉぉ!」



「よし、と。まあ、こんなもんか」
三匹目の豚、マオが家を建て終えました
そうして、家の中でゆっくりとタバコを吸ってくつろいでると……

ドン ドン ドン

なんとも荒いノックが聞こえてきました
「なによ、うるさいわねー」
渋々マオは立ち上がって、玄関に行きます
「はーい。誰よ?」
「オレだよ、クルツとクルーゾーだ!」
しょうがなく、玄関のドアをがちゃりと開けてやりました
「……で、なによアンタら」

疲れてるのか、二人はしばらく肩で息をしていました
「しかし……すっげえ見つけづらいとこに家を建てたもんだな」
そこはジャングルの茂みの奥深く。一見しただけでは、とても見つからない場所でした
「ふふん、まあね。女ってのは、こういうトコ見つけるのが得意なのよ」
タバコをくわえたまま腕を組み、ニッと笑います
「……で、なんなのよ?」
「ああ、家は完成したのか?」
「うん。みてのとおり」
白い、あまりにもシンプルな形の家です
「あまりなにも工夫してねえな」
「あまり飾らないからね。別にアタシにはこれで十分」
「……これじゃだめだ」
そのクルーゾーの物言いに、マオはいくらかムッとします
「なによ、いきなり来て失礼ね」
「ああ、いやすまん。だが、もっと丈夫にしないとだめなんだ」
「ああ」
「……? 一体どういうことよ?」

二人はマオに、狼ソースケのことをあれこれと説明していきます
「マジ? ソースケのやつが、アタシ達の家を壊しに……?」
「ああ。奴はASまで持ち出してきやがった。そうとうに頑丈なつくりにしねえと、ここもやばいぞ」
「ここは幸い、滅多には見つからんだろう。じっくりと材質から見直し、俺たちで協力して頑丈な家に建て直そう」
「ええ、わかったわ」
かくして、三人が協力し、改めて頑丈な家に建て直すことになったのです


三ヵ月後

じっくりと土台からつくりあげ、材質も最高級のメタル金属を使い、複雑な構造で建てていった家が、ようやく完成しました
「や……やったぜ……。この耐久力、頑丈さ……ASの力をもってしても、これは破れねえ……」
「うむ。完璧だ。長い時間をかけて、どこにも欠落のない、完全要塞な家にすることができたぞ」
「ソースケのやつにもここの場所が全然見つからないみたいだしね。あー……疲れた」
三人は、長い時間をかけて完成した堅牢な家を見上げ、満足そうに眺めます
この家の耐久力は、はっきりいってASの強大な力をもってしても、どうにもならないでしょう
ここまでにするのに、実に苦労しました。気の遠くなるほどの時間をかけた結晶が、ようやく実ったのです

ズシイイン ズシイイン

「……ん?」
「あ、あの足音は……」
三人とも家の外に飛び出すと、そこにはアーバレストの姿がありました
「ようやく、見つけたぞ。まったく、こんな巧妙な所にいたとはな」

だが、三人とも高笑いをしてみせます
「ふっふっふ。ソースケ……この家を見ろ。完璧だ」
「うむ。たとえどんな武器類を用いようとも、傷一つつけられんぞ」
「そうよ。さんざん苦労して建てたこの家、アンタごときにやられはしないわよ」
よほど自信があるのか、三人は余裕のある笑いをしてみせます
「そうか」
すると、アーバレストはその頑丈な家に両手を向けます
「……ん?」
次の瞬間、その両手から青白い光が放たれました
そしてラムダドライバがいとも簡単に、家の外装をベキベキとひっぺはがしていきます


「…………!!」
呆然とその様を見届ける三人
無残にも、苦労して建てた家が、もろくもはがれ、壊されて、音をたてて崩れていきます

そうして、宗介はニヤリと笑いました
「ふ……ラムダドライバの前には、なにもかもが無力……」
完全に悪役のセリフです

ぷっちん
宗介のこの言葉で、ついに三人はブチ切れてしまいました
「てめえ……。長い時間をかけ、苦労して建てた家を……いともあっさりと……」
その三人の恨みの言葉を聞かず、宗介は三人に向き直ります
「さて、家の破壊も済んだことだし、そろそろ襲うとするか」
「……その前に、てめえを殺してやるっ!!」

キレた三人はナイフを抜き、アーバレストに飛び移っていきます
そして足場を見つけて上のほうへとよじ登って、ハッチのロック部分をナイフでこじあけてしまいます
「な、なにを……?」
すると、コックピットのハッチが開き、操縦者の宗介の姿があらわになりました
「ひっ……」
その宗介を睨む三人の目には、恐ろしい猛獣が乗り移ったような、そんな殺気がみなぎっていました
「た……助け……」
「死ねっ!!」



その後、ジャングルにポツンと、ボコ殴りにされた無残な狼がいましたとさ

めでたし めでたし



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