ラムダドライバの使い方
「うむ、うまい」
「そお? ありがとう」
「千鳥の馳走には本当に感謝している」
「へ?」
突然の言葉に驚いた。
今日はスーパーで、おつとめ品を買いすぎて、処理に困っていただけだったのだが。
「ん? なんだこれは」
カナメが驚きに浸っていると、宗介がベットの上に置いてある物に手を伸ばした。
ベッドの上は今日、タンスの中を掃除しようと思って出したものが散乱していた。
それは長方形で上半分に画面が、下半分には十の字とA、B、スタート、セレクト、と書かれたボタンがあった。
「あぁ、それはゲームボーイ。小学生ぐらいのとき買ったのよねぇ〜、懐かしいなぁ」
「何だ? ゲームボーイとは」
「えっと、裏のところにソフトを入れて、そのゲームの世界で遊ぶものよ」
「つまり、バーチャルの世界を疑似体験できるものか?」
「まぁー、そうだけど。やってみるのが一番ね」
上にあるスイッチをオンにする。 すると、画面の真ん中に『NI○TENDO』と表示されピコーンと粗末な電子音がする。
いくつか画面をスキップすると、『ポケッ○モンスター』画面に表示された。
はじめからを選びソースケにすべてをゆだねる。
「次の文に進むときはAボタンを押せばいいから。分からないことがあったら言って」
どうやらニックネームは『セガール』にしたようだ。
ライバルの名前を『ウェーバー』していたのは少し気になったが、とりあえず何も言わなかった。
「そんなのやって楽しい?」
「わからん。しかし、俺にはユーモアや想像力が足りないらしい。これはそれらを鍛えるのにちょうど良いのではないか?」
確かにゲームの世界は食事は取らない、トイレも行かない、勝手に他人の家に入る、などなど非常識な世界だが、
非現実の世界であるからこそ、想像力やユーモアというものを知ることが出来るだろう。
「そうね、ソースケには確かにちょうどいいかも。それ、貸してあげるからがんばってクリアしてね」
「感謝する」
数日後、陣代高校生徒会室
「どお、がんばってる?」
「何のことだ?」
「ゲームのことよ」
「あぁ、それならば完璧だ。今も持っている」
「へぇー、ちょっとどんな感じか見せてよ」
「あぁ、ちょっと待っていてくれ」
そういうと自分のかばんを取り出し、中のサブマシンガン、手榴弾、衛星通信機などを掻き分けゲームボーイを取り出す。
カナメはそんなにゲームの事は詳しくは無いが、1度クリアしているので、力量ぐらいは分かるだろうと思っていた。
「これが俺が選び抜いた戦士たちだ」
画面には6匹のモンスターが並び、その横にはすべて100の数字が並んでいた。
さらにその6匹はどれも入手が非常に困難で、攻略本等が無ければ発見すら厳しいものばかりである。
「……あんた、ゲームの知識ゼロから、いったいどうやってこんなに強くしたわけ?」
「ふっ、簡単なことだ。毎回毎回データを取り、分析し、最善の策を取ったまでだ」
と、少々胸を張って答える。 つまり彼は、自らデータを取り自分で攻略本を作ってしまったのだ。
「これだけやれば脚本家やプログラマーが喜ぶわね」
「どうゆう意味だ?」
「褒めてるだけだから気にしないで」
「よくわからんが……。最近は『ドラゴ○ボール』という物のゲームをやっている」
「へぇ〜、でもなんで?」
「風間に『ユニークで、想像力が必要で、俺に理解できないような物はないか?』と、聞いたらそれだった」
「確かにあの世界はむちゃくちゃね」
カプセルから家は出てるわ、都市は進んでるのに荒野は多いわ、必殺技は凄まじいわ、誠に日本の宝である。
「あのゲームはなかなかだ。さすがに空は飛べないが、ラムダドライバのイメージトレーニングなどに使っている」
「へぇー、確かにあの世界もすごいわね」
「あのイメージは使える。今までの様に無理やりイメージせず、あの世界の技をイメージする事の方が容易だからな」
「そういわれればラムダドライバ向きね、あの世界は」
「今までラムダドライバはほぼ防御時にしか使えなかった。しかし、これからは攻撃時にも多く使うことがあるだろう」
数日後、イラク国境付近
「強い、強過ぎる……」
Rk-92<サベージ>を使い強大なテロを企てていた組織のパイロットはつぶやいた。
相手はまるで人間の様な骨格をした白いAS、たった1体。
しかし、こちらが用意したサベージ6体と、この様な状況を想定して念のため用意した中古M6、4体はまるで歯が立たない。
「何だ、あの攻撃は……、いったい何を使ってこんな攻撃を……」
その時、その白いASの外部スピーカーがパイロットの声を伝えた。
『かーめー』
白いASが重ねた手の中に青い閃光がほとばしる。
『はーめー』
閃光は大きさを増し、「キューーーーン」などという音を立てている。
『波ぁーーーーー』
青い閃光は尾をひきながら最後のM6を大破させた。
その後、世界中のテロ組織の間でドラゴ○ボールが話題になり、世界中に広まったのはまた別の話。
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