「それではごきげんよう、ジャック君」

「ふん、このあと貴様を地獄に送り込んでやる。首を洗って待つんだな。」

「その格好で何が出来る?君には……」

 

とある日曜日。

かなめと宗介は映画館に来ていた。

タイトルは「MM9 国王陛下の諜報部員」などというものであり、40年以上も続く大人気シリーズである。

かなめはあまりスパイ映画に興味がなかったし、何よりこのシリーズ特有の濡れ場シーンがあったため見るのをためらった。

しかし宗介が、主人公が乗るアストンマーチン・ヴァンギッシュに搭載されている武器などに興味を示したため

結局は観る羽目となったのである。

 

映画は佳境に入り主人公が2丁拳銃でドカドカぶっ放している。それに対する敵の親玉もカラシニコフ突撃銃で応戦している。

場面が変わり、妖艶な美女がそれまた美しい体術で敵の兵士をのしてゆく。

そして最後にはジャックなる主人公と美女が抱き合ってキスをした瞬間、敵の基地が大爆発を起すのであった。

 

 

映画が終わって。

 

「うー、さすがに2時間近くも観ていると疲れるわ。」

「むう、確かに頭が重い……」

 

映画館から出てきた二人は時折首を擦りつつ近くの喫茶店に入っていった。

 

 

「宗介、アレ面白かった?」

「むう、武器についてはなかなか興味をそそる物ではあったが、どうしてみんなはこういう下らないものを好んだりするんだ?
まるでクルツみたいではないか、ジャックという奴は。」

 

未だに重く感じる頭を擦りつつ宗介は元気なく答えた。

それもそうだ。ストーリーはスパイ物であるがために中々分かりづらい。それに主人公の

ジャックは相当の女たらしである。宗介がクルツを連想してもおかしくはない。

 

「クルツ君と一緒のジャックなんて……。これでも昔はすごくダンディな俳優さんがやっていたんだよ。」

 

かなめはそう言うと俳優の名前を出した。シェークスピア俳優出身で2枚目のジョセフ・ダントンや、
昔はダンディで有名だったが、今ではすっかり丸くなって好々爺の雰囲気を醸し出しているジョン・テネシー。

くすくす笑いながらこれらの俳優の名前を出すかなめであった。

 

「むう、確かに名だたる俳優の名前があるな。しかし、昔のMM9シリーズを見ると今のとは全くコンセプトが違うようだ。」

「確かにそれは言えているかも。」

 

今のMM9シリーズと比較してため息をつく二人であった。

 

注文したパフェやアイスティーがテーブルに届く。

かなめはパフェに乗っているチョコトッピングをこぼさないように注意して突っつき、宗介はアイスティーを飲む。

 

「ねぇ、宗介。私がさ、悪い奴に捕えられたらあのジャックのように助けに来てくれる?」

 

突然の質問に宗介は驚いたが、なるべく冷静に答える。

 

「ああ、もちろんだ。しかし、ジャックのようにしたりはしないぞ?」

「バカ、何言ってるのよ。」

 

宗介が何気なく言った言葉にかなめは赤面して答える。

 

「では、千鳥。君に聞きたいが、君はあの女性のように戦ったりするつもりか?」

「……うん、出来るならそうしたい。背中をお互いに任せられるような感じになればいいかなぁって。」

「俺は……なるべくなら君を戦いの場に行かせたくない。ずっと守っていきたい。」

「何言ってるのよ。私がそうしたいって言ってるんだからそうすればいいじゃない。」

 

かなめの気迫に圧された宗介は一瞬黙り込む。しかし、すぐに口元をほころばせた。

 

「そうか。なら、君には十八番のハリセンで背中を守ってもらうことにしよう。」

「ああ、宗介も言うようになったわね!」

 

二人は一旦黙ると堰を切ったのかのように笑い出した。

初夏を思わせるさわやかな午後であった。








素材はこちらからお借りしました>>A.SLASH



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