あなたががいないことがこんなにも寂しいことだなんて思ってもみなかった。
あなたの存在がこれほどまで大きな存在だったなんて・・・・・

あなたがいないこの街はあまりにも寂しすぎるから
あたしは何もかも封印するわ。



   『なにもない世界』



最近のあたしは部屋の明かりを消して眠れなくなっていた。
平均睡眠時間も以前よりもずっとずっと少なくなった。
眠れたとしても頬に流れた涙の後の冷たさで毎朝目覚める。
そんな日々がずっと続いていた。


あの日、あいつはあたしの手を振り解き帰って行った。
あたしの目の前から去っていくあいつの後姿をただ黙って見ているしかなかった。
傷つき疲れている背中をただ見送るしかなかった。


あたしは独りになるのがずっと怖かった。
だから、誰も必要とはしなかった。
好きにはならなかった。
それはもし独りに戻ったときに自分が自分でいられるかそれが不安だったから。

人は一人でも生きていける。
生きていけるわ。
ずっと自分に言い聞かせていた。
そう、最愛のお母さんが死んでしまった日から。


でも、あいつがあたしの目の前に現れてから何もかも変わった。
あいつは遠慮ナシにあたしの心の中に土足でどんどん入ってきた。
いくら拒んでもいくら拒否してもそれは無理な足掻きだった。

土足で入ってくるあいつをあたしは気づいたら自分から受入れていた。
そう・・・・土足で入り込んでくるあいつがあたしにとっては大切な存在になっていたから。


どこへ行くにも何をするにもあいつがあたしの側にいた。
あいつがいない世界なんて考えられなかった。


あいつにはじめて助けられた修学旅行。
学校の授業で行った山。
すごく楽しかった運動会。
昔大好きだった人と一緒に行った遊園地。
そこであたしは初恋の人よりあいつが大切だ必要だと実感した。
怖い思いをしたけど自分の力がなんとなく理解できたメリダ島。
あいつと彼女の写真をみて嫉妬した自分。
あたしの前からいなくなったあいつを気づけば迎えに走っていたあの日。
嫌な事もあったけど自分の気持ちに気づいた日。
寒い12月クルーザーですごす誕生日がまた事件に巻き込まれても
ほんの少しあいつと気持ちが通じ合えたような気がした。
そして、あいつからはじめてもらったプレゼント。


ほんの数ヶ月の間にあまりにも一緒にいすぎた。
でも、今あいつはここにはいない。
あたしのいる世界にあいつはいない。

こんな世界に生きていても嬉しくない。
こんな思いをするなら助けてなんて欲しくなかった。
あたしの目の前になんて現れて欲しくなかった。
あいつがいなくなるくらいならこんな命いらない。

でも、あいつが命をはって守ってくれた助けてくれたあたしの命だから
あたしはあたしとしてあたしだけの人生を歩まなくちゃいけない。


この悲しい世界の中で・・・・・



   ソースケ・・・あんたにはわかる?
   大切な人が自分の側からいなくなるのがどれだけ寂しくてつらい事か。
   そんな想いしたことある?
   あんたは今何をしてるの?
   あたしの知らないどこか遠くの場所で今も戦って血を流して生きているの?
   
   お願い・・・・一言でいいから声を聞かせて・・・・
   でなきゃ壊れてしまいそうだから。

   あんたのいないこんな世界なんていらない。
   生きていたって意味がないから・・・・・

   どうかこの胸の痛みを止めて・・・・











(Fin)





▼ブラウザを閉じて戻る



 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送