『もう一度・・・・・』







ビルが立ちはだかるこの街
あたしは一人歩いている
何を探し
何を求めているのか
それさえもわからない


本当はわかっているのかもしれない
でも、それを認めるのが嫌で
ただやみくもに
歩くだけ


ショウウインドーに映る姿は
いつもと変わらないあたしの姿
でも、ぽっかりと開いた胸の置くの隙間は
このガラスには映らない


すれ違う人を見ては
誰かと重ねてしまう
似ても似つかないのに
ただ男の人だ背格好が似ているだけで



目で追っては
それは違うと思い知る



時間は動いているのに

あたしの心はあの日のまま動かない












信号が青から赤に変わる

わかっているこのまま歩けばあたしは死ぬわ
車にひかれて死ぬわ


それでもいい
こんな想いをしていひとりで生きていくのならこんな命なくてもいい


一歩踏み出せばそれで終わる―――――








誰かがあたしの腕を?み助ける

痛い・・・痛いよ・・・でもこんな痛さ胸の苦しみに比べたら平気
どうして助けるの助けてなど欲しくないのに







「危ない!!君は死ぬ気か!!せっかく助かった命無駄にするんじゃない!!」





道路に倒れこむあたしの耳に聞き覚えのある声が聞こえる



うそ・・・
バカな・・・・
そんなことはありえない・・・・・
だって、あいつは二度とあたしの前に現れないって言ったんだから・・・
あたしがあいつを突き放したんだから・・・・・


体が震えて起き上がれない
顔も上げられない



どうすればいい?



すると、目の前にそっと手が差し伸べられる



「そこに座っていては危険だ。早く、立ち上がれ」




ずっと忘れかけていた暖かい手
何度も何度もこの手を握って走り回った
逃げ回った

忘れない、大きくてごつごつとした暖かい手



その手に触れる


勇気をもって顔を上げる




間違ってないように


願い


確認する






優しく見つめるその瞳は今も昔も変わってなかった




「どうして・・・・ここに?」
「さぁ、どうしてだろう」
「もう2度と会わないって言ったのに」
「確かに言ったな」
「じゃ、どうして・・・・」

彼は見せた事のない笑顔を向ける。

「理由は一つだ。声が聞こえた」
「声?」
「あぁ・・・俺を呼ぶ声。だから、その声を追ってきた。君は俺を呼んだだろ?」
「呼んで――――ない・・・よ・・・・・・」
「呼んだ。寂しいと、一人じゃつらいと」
「そんなこと言ってない」
「そうだな・・・言ってないかもな。でも、俺には聞こえたんだ」




本当はあたしが震えているのだと思った。
でも、あたしではなく彼の手が震えていたのだ。



「怖い・・・の?」
「あぁ・・・怖い、とても怖い。また君に突き放されそうで」


その言葉を聞いたときあたしの身体は動いていて彼をしっかりと抱きしめていた。



「ソースケ・・・・遅いよ・・・・・・」
「すまない」
「もっと早く戻ってきてよ」
「すまなかった」



あたしはあなたの愛を欲しかっただけなの
こうやってあなたをいつも抱きしめたいと思っていたのよ




「もう一人にしないでよ・・・・心が寂しいのよ・・・・
あんたじゃなきゃ、あんたが居なきゃ心が寂しくて何も出来ないのよ
不安と孤独で何も出来ないのよ」




宗介と居た時間が大きすぎて
宗介がいないだけで全てが闇の中にいるようで
寂しさと不安と孤独で押しつぶされそうになるのよ





「ソースケ・・・・もう・・・・・嫌だよこんな風に不安で居るのは
あたしを連れ出してよ寂しさも不安も孤独もない世界に・・・・」
「あぁ・・・わかっている。安心しろ俺はもうどこにも行かないから。
 君の傍を離れないから。俺はそのために帰ってきたんだ。
相良宗介として君とここからもう一度始めるために」



宗介は力いっぱいかなめを抱きしめる
全ての想いを注ぐかのように



あたしはあなたの愛がほしかったの
こんな風に不安も何もないあなたの愛を
そして、何度も何度も唇を重ねたいともおもったの
でも、居なくなる現実が怖くてそれが出来なかった
そんな不安ももうしなくていいのよね


「ソースケ・・・・」




見詰め合う二人は何度も何度もその場で唇を重ねあう





人の目など気にせずただ自分の想いだけを信じて







「ソースケ・・・・」
「なんだ?」
「あたしはもうあなたなしじゃ生きていけないの」
「あぁ・・・」
「だから・・・・」
「だから?」
「もう逃がさないから、二度と離さないから」











(Fin)














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