More than a feeling

 

「夜空に吸い込まれそうになったことない?そんな時って夜空がすんでいて、
 星がたくさんちりばめられていて、綺麗に瞬いているんだよね。」

 

 

 

私は今、宗介と一緒に特急に乗っている。東京近郊の温泉に行った帰りだ。

つい先日、恭子が「かなちゃーん、このチケットあげる。」といって温泉宿の宿泊券をくれたのだ。私は最初遠慮したんだけど、

 

「相良君と一緒に行ってきなよ。一つ、いい思い出作ってきたら?」

 

とか言うものだから、思わず顔真っ赤にしちゃったじゃない。

うー、恭子のやつめ。あとでとっちめてお仕置きしてやるわ。

で、肝心の宗介はちょうどよく休暇中で何も予定が無かった。だから私は勇気振り絞って宗介を誘ったんだけど、

 

「千鳥、顔真っ赤だぞ。しかも喋り方がおかしい。言語中枢に何か……」

 

とか言い出すもんだから思わずハリセンで撃沈させちゃった。この朴念仁め。

 

何はともあれ、週末の連休を利用して温泉でゆっくりすることが出来た。宗介も日に日に増すアマルガムとの戦いで疲れがたまっていたから、すぐに寝ちゃったっけ。

その寝顔が可愛らしいといったら。頬をつんつん突っついてちょっと遊んでみた。その時、宗介が寝言で「千鳥……」等と言ったもんだから心臓に悪いと言ったらありゃしない。

今朝は恥ずかしくて顔合わせられなかったじゃないの、もう。

 

まぁ、何がなんだで、今は特急の中。私はついさっきまで居眠りしていたんだけど、宗介、寝ちゃってる。本当、最近お疲れみたい。

やっぱり寝顔がかわいい。起きている時はあんな騒々しい軍隊バカなのに、どうしてこう寝てる時って表情が違く見えるのかしら。

宗介が傭兵じゃなかったら、普通の日本人として成長していたのなら、全く違う宗介になっていたのかもしれない。

その宗介と私はどう付き合えばいいのか。全く想像できない。

 

そう考えているうちに外はもう暗くなっている。車内から空を見上げると、一番星が輝いていた。

周りはまだ市街地だから明かりが輝いている。その市街地を抜けて山の中に入ってゆく。速度を落として進んでいく電車。周りは森が多くなっている。

短いトンネルを抜けて空を見上げる。すると、さっきとは違った星空が見えてきた。

それまで見えなかった細かい星までが見えてきたのだ。おぼろげながら輝く小さな星。

一生懸命に自分の存在をアピールしようと自己主張しているような感じで、そのような星が一面の空に輝いているのだ。

ふと、ニューヨークに行く前の幼馴染の言葉を思い出した。

 

「夜空に吸い込まれそうになったことない?そんな時って夜空がすんでいて、星がたくさんちりばめられていて、綺麗に瞬いているんだよね。」

 

私がニューヨークに行ったあとにあの子も大阪の方に転校しちゃったらしいけど、今でもよく覚えている。

今の空はまさにそう。電車の中からだから良くは見えないんだけど、目を凝らしてみると、東京の空とは大違いだった。

 

ふと、左肩に重い感触を感じる。左をみると、眠っていた宗介の頭が私の方にずれてきたのだった。

重いけど、心地いい感触。まだ気持ちよさそうに眠っている宗介を起こさないように手を優しく握ってみる。

色々何かを扱っているのかもしれない。ちょっとかさかさしている。でも暖かさが心地よい。

この心地よさは絶対離したくない。その思いを込めるかのように私は宗介の手を握りしめるのだった。

 

 









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