「決戦はバレンタインデー?」



かなめはせっせと朝からいろいろと準備をしていた。
今年のバレンタインデーは土曜日っということで学校も休みだからだ。

メリダ島へ任務で戻っている宗介も午後には帰ってくる予定だ。
なので、その足でかなめ宅へ来るようにっとは伝えてあった。



「さてっと・・・・・久しぶりにケーキなんか作っちゃったから疲れたかな?」

かなめはポンポンっと自分の肩を叩きながらソファーへとストンッと腰を下ろした。

「は〜。それにしてもソースケちゃんと帰ってくるのかなぁ?」

かなめは時計を見ながらポツリと言った。
時計の針はまだ午後3時を指したばかりだった。

  (予定ではもうそろそろ帰ってきていい頃なんだけど・・・・・。)

っとそのとき携帯電話のベルが鳴った。宗介専用の着メロ。
かなめはあわてて受話器を取った。

「もしもし?」
『千鳥か?』
「うん?」
『俺だ、サガラだ。今、空港に着いた。早ければ2時間ほどで戻れる予定だ。』
「うん。わかった。でも、よくすんなり帰してもらえたわね。」
『どうしてだ?』
「え・・・うん。ちょっとね。」
『まぁ、いい。では、また後で。』
「うん。後で。」

そして、電話を切った。
かなめは不思議に思った。

  (あのテッサがこんな日にそう簡単にソースケをこっちへ帰すとは思ってなかったんだけど・・・。)」

そう思いながらも「まぁーソースケは帰って来たんだからまあいっか。」っと今度は
夕飯の支度を始めたのだった。



それから2時間後予定通り玄関のベルが鳴った。
こればかりはいつもかなめは関心した。
どこでどうこれだけはっきりと時間を守れるのか不思議で仕方がなかった。
でも、これも相良宗介っと言う人間だからできる業なのだとかなめは感心した。

「お帰り。」

そう言って玄関を開けると迷彩服のままの宗介が大荷物を抱えて立っていた。

「ソ、ソースケ!?どうしたの?その荷物。」
「あぁ、これか?帰りに大佐殿に渡されたんだ。」
「テッサに?」
「そうだ。明日はバレンタインデーだからどーのこーのと言っていたな。」

その時、かなめはピンっと頭にひらめいたのだった。

  (そういうことか・・・要するに自分もそうすけにチョコを渡して受け取ってもらった
   っと言う事を見せ付けたかったのね)

「っそ。まぁーいいわ。入って。」
「あぁ。」

そして、宗介はいつもどおり部屋へ入るとソファーへと腰下ろしたのだった。

「そうだ、大佐殿が君にも渡して欲しいと預かっている。」

すると、宗介は荷物の中から袋を取り出し、それをかなめへと渡した。

「なに?」

そう言うとかなめは素直に受け取った。

中をあけて見ると可愛くラッピングしたものと一緒に手紙も入っていた。



  『かなめさんへ
    こんにちは、かなめさん。ご無沙汰しております。
    これを読んで下さっているっと言う事はかなめさんにもチョコが渡った
    っと言う事ですよね?
    明日・・・っというかもうこの手紙を読んでらっやる時は今日かな?
    バレンタインデーですよね。
    先日、メリッサに教えてもらいながら作ったんです。
    もちろん、相良さんの為にvv
    でも、かなめさんにもお味見をしていただきたいのでよろしかったら
    食べてくださいね。
    本当は今回も相良さんの足をこちらに止めようと思ったのですが早く
    かなめさんにも食べていただきたいので今回は特別、相良さんに予定通り
    帰っていただきました。
    なので、素敵なバレンタインデーをお過ごしくださいませ。
                            
                             テッサ
   
    追伸
     よろしかったら感想などお聞かせくださいね。           』



最後には誇らしげにピース姿を掲げた似顔絵が書いてあった。                              
かなめはその手紙を読み終えると『クシャリ』っと握りつぶし
「そう言うことね、受けて立とうじゃない。」っと恐ろしい笑みを浮かべた。

そんなかなめの様子に殺気を感じた宗介はしばらく声をかけられないでいた。



「ところでソースケ、あんたテッサからもらったチョコ食べたの?」
「いや、まだだ。」
「っそ。じゃ、先に食べる?」
「今か?」
「うん。」
「でも、そろそろ夕飯では・・・・」
「そうだけどあたしの作ったもの食べた後に食べるより先にテッサがくれたの食べたほうが
味もはっきりわかるんだしいいんじゃない?」

そう言っているかなめの言葉から刺々しい殺気が宗介には伝わっていた。

「しかし・・・・せっかく、君が・・・・」
「いいの。あたしのはあ・と・でいいの。だから、早く食べましょう。」

なぜ、そこまでかなめが食べたがるのか宗介は不思議で仕方なかったが
そこまで言われてはあとに引けず包みを開けると一つぶ口へと放り込んだ。
その後、かなめも同じように口へと放り込んだ。

そして2人は一瞬固まった・・・・っとその瞬間、
かなめは思いっきり口の中に入れたものを吐き出し、宗介はなんとか飲み込むことに成功した。

そして2人は目を合わせた瞬間。

「な、なによこれ!!」
「な、なんだ?」

っと口をそろえて叫んだ。

「テッサ、これ手紙にチョコって書いてたわよね?」
「俺も確かそう聞いていたが・・・・」
「でも、味が・・・・」
「ないぞ。」

そう言って2人は持っていたチョコを見た。
そして、「もう一つ食べてみる?」っとかなめが目で合図をすると
宗介もうなずき同時にもう一つ口へと放り込んだのだった。

『☆◇*※○▽☆◇△』

やはり、何個食べても結果は同じだった。

そしてかなめは恐る恐る宗介に聞いてみた。

「これって、テッサさぁあんたとあたし以外にこのチョコ渡した様子だった?」

すると宗介は無言でうなずくと「隊員全員にだ・・・」っとポツリと言った。
それを聞いたとたんかなめは宗介に「早く、テッサに電話して!!」っと叫んだ。

「大佐にか?」
「そうよ!!こんなもの隊のみんなが食べたらとんでもないことになるわよ!!
まだこの時間だとあっちはバレンタインでーにはなってないはずだから今ならまだ間に合うわ!!」
「了解した。」

宗介は急いで電話をかけた。

――――プルプルプル・・・・

『はい。』
「大佐殿ですか?」
『あ!相良さんですか!?どうなさったんですか?もしかしてチョコの件ですか?』

嬉しそうに話すテッサの声が傍にいるかなめにまで聞こえていた。
っと、そんな会話を無視してかなめは宗介から携帯を奪い取ると勢いよく叫んだ。

「テッサ!!」
『あら?かなめさん?お元気ですか?』
「お元気?じゃなぁぁぁぁぁぁーーーい!!あんた、あんたチョコ!!」
『あ!もしかして、チョコのお礼ですか?』
「んなことあるわけないでしょ!!あんたあのチョコ食べたの?」
『えぇ、食べましたよ。』
「で、味は?変だったでしょ?」
『いえ、全然。ちゃんとチョコレートでしたよ。』
「じゃ、なんでソースケとあたしにくれたチョコは何も味がしないのよ!!。」
『何も味がしない?』
「そうよ!!同じものくれたんでしょ?」

するとしばらくの沈黙が続いた・・・・・

『おかしいですぅー。』

受話器から聞こえた声は明らかに不安な声だった。

『同じように作ったのに・・・・』

かなめがギクリっとした。

「あんた、今なんて言った?同じようにって・・・・」
『そうですよ。同じように作ったのにって言ったんです。』
「それってもしかして・・・・」
『はい。メリッサに教えてもらったあとに自分で作りなおしたんです。』
「それって、あたしとソースけの分だけ?それとも全員?」
『もちろん全員です。だって、皆さんには私が一人で作ったものを食べていただきたいから・・・』

その言葉を聞いたとたんかなめはの顔から一斉に血の気が引いた・・・・

「あんた・・・・まだそれ渡してないわよね?」
『え?』
「だから、隊のみんなにはまだ渡してないでしょうね?って聞いてるのよ!」
『え!?渡しちゃいましたよ。』
「は???」
『だから、先ほど渡しちゃったんです。で、その後に丁度この電話が。』
「なんでよ?まだそっちはバレンタインデーじゃないでしょ?」
『そうなんですけど・・・・』

っとそのとき電話の向こうですごい音がした。

《ドタ・・・・・
 【ウェーバーさん!どうしたんですか?】
 【テッサたん・・・あれはないよ・・・・チョコ・・・・・】
 【ウェーバーさん!ウェーバーさん!】》

―――――ツーツーツー


  (・・・・・・・・。)

「ソースケ・・・・あっちなんだか大変なことになってるみたい。」
「そのようだな。聞こえていた。」
「はぁーテッサ、自身持つのはいいけど作るの苦手だったら教わったものを渡せばいいのに・・・・」
「まぁ、それも大佐殿のいいところなんだろう。」
「わかってるけど・・・・・さすがにね・・・・こっちの身にもなってほしいと・・・。」
「うむ。」

さすがの宗介のこの味には参ったらしかった。

「どうするこれ?」
「そうだな・・・・・捨てるのはもったいない・・・・しかし・・・・」
「じゃ、あたしにあんたの分も頂戴。」
「これをか?」
「そうよ。多分、原料をちゃんと使ってるだろうから加工しなおせばちゃんとチョコになるだろうし
あたしがまたお菓子に使うわ。捨てるのもったいないでしょ?」
「そうだな。そうしてくれるとありがたい。」
「食べ物を粗末にしちゃダメだしね。」
「あぁ。」

それからかなめは宗介の分のチョコも受け取ると冷蔵庫へとしまった。

  (しかし、この大量のチョコ・・・いつになったらなくなることやら。)

かなめは密かに不安を感じていた。



「じゃ、そろそろ夕飯にしようか?」
「あぁ。」
「ソースケはテープルに食器並べて。」
「了解した。」

今日は珍しくチーズフォンデュだった。

「熱いから火傷しないように食べてよ。」
「うむ。」

そして、火傷しないようにそぉーっと口へと入れる。

「うまいぞ。」
「でしょ?って簡単なんだけどね。」
「それでもうまい。」
「そう言っていただけると光栄です。」

かなめはニッコリ微笑んだ。

   (やっぱり、テッサのチョコの後にしといてよかった。)

かなめはうすうすはヤバイだろうとは感じていたらしい。

「でね、これもあるんだ。」

次は冷蔵庫からケーキを取り出した。

「今日はバレンタインデーだからチョコレートケーキを作ったんだ。」

宗介はチョコと聞いて一瞬。ギクっとした。

「大丈夫よ。あたしが作ったんだから。」
「そうだな。」

そして、夕食後ケーキを切り分け2人で食べた。

「どう?」
「あぁ・・・」
「あぁ・・・じゃわかんない。さっきはあんなに素直に美味しいって言ってくれたのに。」

宗介はしばらく黙り込む。
そんな宗介の顔をかなめはの覗き込むように見ていた。
観念したように宗介は言う。

「うまい。」
「っそ、よかった。」

その言葉を聞いたかなめはそっけない返事をしながらも嬉しそうに微笑んでいた。

「やはり、一番安心して食べれるのは千鳥の料理だけだな。」

その言葉にかなめは「へ?」っと聞き返す。

「いや、俺は他の人間が作る料理は不安だが君の料理は何でも安心して食べれるなと。」
「ほんとに?」
「あぁ。」
「じゃ、これからもどんどん遠慮なく食べてよ。」
「もちろんだ。」

そして、宗介はケーキをおかわりした。



その時2人はすっかりメリダ島での出来事を忘れていた。
それはメリダ島では一つの伝説となっていた。




 




(FIN)







▼ブラウザを閉じて戻る




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送