駆けるデイズ・ウィズ・フレンズ

 

「これからも良い友人として付き合ってくださいね」

 自分の上官から言われた言葉だ。如何に年が近かろうと、常識で考えればありえないことだが……
今はまあそれも良いかと思っている。俺もずいぶん変わったものだ。

 ここで自分の人生をふと思い返してみる。

 幼少期から生きるか死ぬかの戦いであったが、その中であっても……いや、あってこそ数々の友が俺を支えてくれた。

 悪友・戦友・親友……友にも様々あるが、所によっては敵ですらも『強敵(とも)だった……』と言い切れるつわものもいたそうだ。
噂によれば何かしらの拳法の継承者で新しいが……時おり拳法家は訳が分からないことを言うものだ。
特に一成は何が言いたいのかまったく不明なときがある。

 ふむ……しかしだ、俺は俺の価値観のみで生きていけはいけない。この地においてはそれが顕著だ。
それがこの一年間で俺が学んだ最も重要な事柄だ。なんと言ったか、
この前国語の授業でちらりと出てきた言葉……そうだ、『郷に入っては、郷に従え』だな。

 よし、というわけで、俺も敵ですらも『強敵(とも)』と言ってみようと思う。

 

「ガウルンよ、お前は真の『強敵(とも)』だった……」

 

 …………

 ………………

 ……………………

 なんだか妙に不愉快な気持ちになった。

 この件は保留ということにしよう。でなければ、俺の精神が異常をきたしかねん。

 

 さて、友という話なら学校の友人たちももちろん友になるのだろう。少なくとも俺の人生では、存在しえなかった種類の友たちである。

 気のない話で盛り上がり、馬鹿馬鹿しい話を日夜繰り広げる。そのすべてについて行っているとはまだまだ思えないが、
 それでも、それを楽しいと思える、尊いものだと思える自分がいる。

 そう、今では一成との決闘でさえ今の日常を占める重大ファクターとなっているのだ。倒し・倒されるが、生死に直結する俺の考え方に、
ありとあらゆる意味で反発するような決闘の申し込み、何があっても拳を交えたいらしいが……
結局は俺のほうが一枚上手だ。素手でスタンガンに挑むなど愚の骨頂としか言いようがないだろう?
 もっとも、その後に千鳥からハリセンで殴り倒されたのだが。

 そうそう、千鳥といえば彼女も友……だと思われる。ある意味戦友でもあるが、
 やはり彼女はこちらの世界で、大いに笑って過ごしてほしいと思う自分がいる。

 だが……ふむ、いざ『友』だと思うと少々違和感を覚える気がする。こう……友というよりも……。

「どうしたのよ、ソースケ?」

 急に下から覗き込まれ少々驚く。まったく気づかなかった……勘が鈍っているようだ。平和ボケしているのか?

 だが、今ので確信を得た。彼女から名前を呼ばれるとなかなかに心地が良いのだ。
 千鳥は俺の中で友以上の大事な人……ということになるのだろう。

 どことなくすっきりした。彼女の話からすると今夜はカレーらしい。重ねて実に気分が良い。

 

パンッ!

 

 ……! 銃声か!? 破裂音!?

 いずれにせよ彼女、周囲、そして俺自身の安全を確保せねば!

 まずは周囲の机を蹴り飛ばして、陣地を確保。続いて残った机の陰に隠れて、無なも能登から愛銃のグロッグ19を引き抜き

「千鳥伏せろ!」

 と、千鳥を地面に押し倒そうとしたが、それよりも早く、

「何してんのよっ! あんたはぁぁぁっ!!」

 ハリセンにて張り倒された。緊急時の俺よりも早くハリセンを取り出して、俺を張り倒すとは……いや、それよりも――

「それは、いつもどこから取り出しているのだ、千鳥?」

「うるさい! 乙女の秘密! ったく、多少成長したと思ったら、いつもいつも同じ行動してぇっ! 学習ってもんはないのあんたは!?」

 声を荒げつつ、ハリセンとスタンピングの嵐。如何に俺が鍛え抜かれた屈強な兵士でも痛いものは痛い。

「痛い。痛い。痛いぞ」

 一応言葉にはしてみるものの、これではすまないだろう。とめるのは第三者――主に常磐の仲介が必要だ。これもいつもどおりだな。

 千鳥の攻撃の応酬から急所は避けつつ、ふとあることを思いつく。

 ――そうだ。この戦闘技能もある意味俺の戦友なのだ。
 過去幾年も前から俺とともにあり、過去幾度となく俺を救ってくれたもの。

 非常に頼りがいある戦友だが……今この場においては悪友としか言いようがない。

 この悪友とも折り合いをつけねばならないだろう……。

 

 だがまあ、やれないことはないだろう。

 千鳥も立った今口にしただろう?

『多少は成長した』

 と。

 

(終)

 

追記・破裂音の正体は、サイクリング部のタイヤのパンク音だった。
荒れた教室は自分ですべて後始末をし、弁償の申請もしておいた。まったく問題ない。

 ただ……罰としてカレーを抜かれたのは少々残念である。

 







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