Jの名の下に

 

メゴッ!

聞いただけで痛そうな効果音が、放課後のグラウンドに鳴り響く。

あら〜、あれは奥歯折れてるかもね〜。と、一般人なら割と大騒ぎしそうな事態について、
 平然とそのようなことを考えながら、千鳥かなめは飛んでいく椿一成を眺めていた。

「うごふっ!」

 大地に『直撃』し奇妙なうめき声を上げる椿。彼を殴り飛ばしたのは言わずもがな、
自称・学園で最も平和主義者の相良宗介であった。(もちろん彼以外、誰もそのようなことを認めていないのだが)

 今回、きわめて珍しく宗介がまともに椿の挑戦を受け、放課後のグラウンドでその対決が決行されたのだ。

「ぐ……ぐおぉぉ!」

 ガクガクと震える膝を押さえ、歯を喰いしばって『気合』で立ち上がろうとする椿。
 その『ド根性』は相も変わらず見上げたものだ。

「無理だ、貴様では俺には勝てん」

 それに対してまっすぐな視線を送る宗介の、『挑発』とも取れそうな発言。

 その光景にかなめは少々違和感を覚えた。いつもの彼なら見下げた視線を送りつつ、
 無言で『てかげん』無しにとどめの蹴りを入れているからだ。

「まだ……まだ俺の修練は足りないのか……」

 呼吸も荒くうつろな目で、椿はどうにか立ち上がり拳を構えた。

 宗介もそれに合わせて拳を構える。

「確かにそれも重要だ。だがな……それだけではない」

 ぼろぼろの状態でも椿は『突撃』し、それなりに鋭い『加速』のついた拳を放つ。
 宗介は『集中』して、それらを全て紙一重でかわしていく。

「戦いとは正々堂々、己の全力を賭して悪と戦うのだ。
 だから貴様が拳で勝負を挑むのなら、俺もそれに全力で応じる……」

 宗介は、なりふり構わず繰り出される拳を絶妙のタイミングでかわし、
 見惚れるほどの『カウンター』で以って椿を撃墜する。『不屈』の精神を持つ椿も地に伏してしまった。

「うそ……」

 かなめは宗介の言葉に驚愕……いや、『戦慄』すら覚えた。「正々堂々」? そんなもの彼の辞書には存在しないはずだ。

「さらにだ。正義を信じる熱い心、友との『友情』や『信頼』の固い結束を知った俺に現在負ける要素はない」

 すでに意識を失ってうんともすんとも言わない椿に、宗介はいつもの通り淡々と言葉を並べていく――
 ただしその内容に含まれる「熱さ」以外だが。

 「正義」? 「友との結束」? かなめは『戦慄』を越え、めまいを感じる。

 この男はそんな単語を口にするような奴ではない。 敵を叩き潰すことに全力を以って(どのような手を使おうとも)挑み、
 『狙撃』や『奇襲』などの技能をふんだんに使用して、躊躇なく殲滅することが宗介の信条であり、
 生き残るための術であったはずなのだ。

「だが、貴様は悪ではない。『昨日の敵は今日の友』と言う格言を俺は信じているぞ。
 『努力』を怠るな、グッド・ラック(『幸運』を祈る)!」

 椿を友人として扱い、事も在ろうか『応援』するようなセリフをのたまう宗介
 であったが、椿は沈黙しつづけておりもはやピクリとも動かない。

(これは……悪夢? 悪夢なら早く覚めて……)

 めまいが本格的になり、かなめは本気で足元から『脱力』していく。
 しかし、その崩れ落ちる身体は、力強くたくましい手に支えられた。

「大丈夫か? 千鳥。すまない、待たせてしまったな……」

 彼女の顔を覗き込む宗介の瞳はどこまでも実直で、溢れんばかりの熱い『魂』が放たれていた。

「ソースケ、大丈夫!? 熱はない!? 頭でも打った!?」

「?……俺はいつもどおりだが……?」

 心配するかなめに対し、宗介は本当にわからないというように、眉根を寄せた。

「何かおかしなことを言っているか?」

「い……いや……気にしなくていいわ」

 (何に『覚醒』したのかしら……)と思いつつ、激しい動悸を抑えながら、かなめは返答する。

 その後、気絶した椿を放置して彼らは岐路に着いた、

 

 その夜、かなめはとある女性に電話をかけていた。

 宗介の上司であり、一時期彼女のクラスメートであった少女だ。

「――てなことがあったんだけど……何か心当たり無い?」

 受話器の向こうで、テレサ=テスタロッサは仕事が終了しているにもかかわらず、執務机で何かの設計図を書いている。

「あ〜、そうですねぇ……朱にも混じれば紅くなると言いますか……むしろ軽く洗脳されたしまったと言いますか……」

 困ったような表情を浮かべて、こめかみに汗をたらしながらテッサは切れの悪い返答をした。
 洗脳の言葉にかなめはいぶかしげな表情をする。

「洗脳?」

「あ……いえ! 失言でした! 忘れてください……」

 思わず『自爆』してしまったらしく、電話越しでも彼女の慌てっぷりが伝わったかなめは、あえて深く追求をしなかった。

「まあ、いいわ。また、まとまったら電話チョーダイ」

「は……はい! わかりました」

すっかり『かく乱』されたまま、テッサは電話を切る。
 深く息をついた彼女の脳裏には、短期間ではあったが激戦をともに勝ち抜いた人々のセリフが浮かんでいた。

 

「神も悪魔も……正義の心で越える!」

「五人の心を一つにするんだ!」

「俺のこの手が真っ赤に燃える、お前を倒せと輝き叫ぶ!」

 

 どこまでも熱い人たちだった……ともすれば、暑苦しいと表現できるほど。

 ほとんどが辛い戦闘であったが、その中で数々あった楽しい思い出にテッサは笑みをこぼす。

「そろそろ、休みましょうか……」

 スタンドの電気を消して、寝台へと足を向けるテッサ。

 彼女が机の上に残した設計図。そこにはこう書かれてあった。

「AS改造計画書〜『必中』! 『ロケットパンチ』編〜」

 テッサも相当毒されているようで……。

 

(終)

 

 

あとがき

こんにちは、yoshiです。

今回は、「わかる人にしかわからない」というとんでもないものを書いてしまいました。

これ大丈夫なんですかね。正直不安です。

『 』内はちゃんと意味があるので、それも推理してくださいw。

それでは、次回また会えましたら

 

祝・スーパーロボット大戦Jにフルメタ参戦!

ボンタ君も参戦らしいです! 楽しみ〜w









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