『かわり目にはご注意を』



それはとてもいい天気の日の事でした。





「千鳥…買ってきたぞ。」

「うぃ〜…ありがとー……。」



どうやら宗介がかなめに頼まれてなにか買いに行っていたようだ。



「今食べるか?」

「うん…。じゃないと薬も飲めないもん……。」

「了解した。しばし待て。」



買ってきたのはレトルトのお粥とヨーグルト。

なぜこれが必要になったのか…どうして自分で買いに行かなかったのか……。

大体想像はつくだろう。



「千鳥…今作るからその間にもう一度熱を計っておけ。」

「……わかった。」



季節はまだ九月。

残暑が厳しい今日この頃、30℃を越える日が続いていた。

だが昨日は違った。

雨が降ったせいか涼しかったのだ……夜なんかは寒いくらいに。



「何度だった?」

「……38度2分……。」



相当高かった。

宗介は大きなため息をつき、持ってきた粥の乗ったお盆をかなめに渡す。



「昨夜をその格好で…尚かつ夏用のタオルケット一枚で寝ればその結果は当然だと思うが?」

「うるふぁーい……。」

「……とにかく食べろ。」



受け取った粥をじっと眺めるかなめ。

いつまでたっても食べようとしない。



「どうした?」

「食べる元気ない。」



そう言いながらお盆をそのまま宗介に渡し、倒れるようにベッドに横になってしまった。



「千鳥……。」



病気で食欲がないのは仕方がないのだが…いくらなんでもこのままでは……。

ただでさえ熱も高いのだ。

薬は飲んでおいた方がいい。



「千鳥…ヨーグルトならどうだ?」

「うむぅ〜…いらなーい……。」



最初は本人も食べなければ…と思っていたはずなのに……。

そんな時、宗介はふとある男との会話を思い出した。










「お前滅多に風邪とかひかねえよな。」

「健康管理には充分気を付けている。」

「まあ…それが一番大事だけどよ……。たまには風邪ひくのもわるくないぜ?」

「なんだそれは?」



病気になるのがいいと言われてはさすがに疑問に思うだろう。



「風邪ひくとよ…人間ってのは寂しくなるのよ。」

「だからなんだ?」

「わかんねーかな〜……甘えても許されるんだぜ?だったらカワイコちゃんに手取り足取り世話してもらうって
のもいいじゃねーか……。」



なるほど…この男らしい考え方だと、宗介は思った。



「風邪をひいたら手取り足取りの世話が必要なのか?」



宗介の場合…風邪をひいた時は食事をしっかりとって薬を飲み、水分補給をわすれずに暖かくして寝る……とい
う知識しか持っていなかった。



「なに言ってんだよ……。例えばだな……。」










かなめが寝ているベッドに腰かけながら…宗介はなにかを思い出したように行動に出た。



「千鳥。薬を飲むために少しでも食べた方がいい……ほら。」

「ふぇ……?」



なんと宗介はさじで粥をすくい…かなめの目の前につき出したのだ。

いわゆる……“あーん”である。



「な…なにしてんのよ……。」



いくら熱を出しているとはいえ、これはさすがに恥ずかしいらしい。

熱のせいで赤くなっている頬を別の意味でも赤くする……。



「薬が飲めなければいつまで経っても治らないぞ?」

「う……。」



本来なら照れ隠しで宗介をハリセンでハタいているところだろう。

しかし…悲しいかな、今のかなめにはそんな元気はどこにもなかった。



「どうした千鳥?む……さっきより赤いな。熱が上がったか?だったら尚更食べないと……。」

「い、いや…あの……だ、だからね……?」



断ろうにもそんな理由はどこにもない。

食欲がないから……とでも言えばいいのか?

否……そんな理由ではこの男を納得させるには不充分である。



「それ以上悪化してもいいのか?」

「う……。わ、わかったわよ……。」



言う事をきかない身体をなんとか起こし、かなめは目の前にある粥を口にしようとした……。

その時。



「カ〜ナちゃんっ。風邪ひいたんだって〜?」



ピシッ。



……という効果音でも響きそうな勢いでかなめはそのまま固まった。



「常磐か?」

「……………。」

「どうした?」

「……け…決定的瞬間シャッターチャーンス!!」



パシャパシャパシャっ!!!



これでもかと言わんばかりに愛用のデジカメに目の前の光景をおさめる恭子さん。

たしかに滅多に……いや、これを逃したら二度と見られない光景である。



宗介に“あーん”をさせられているかなめなど……。



「きょ…あ…え……?……な………。」



ようやく覚醒したかなめがなぜここに恭子がいるのか聞こうとする。

が、うまく言葉が出ない。



「ん?さっきコンビニで相良くんに会ってね。その時にカナちゃんが風邪ひいたって聞いたんだよ?」

「あ…そ、そう……。」

「ちょっと心配だったから来たんだけど…やっぱり相良くんが言ったとおり大丈夫みたいだね♪」

「そ…そーすけがなに言ったって……?」



なんとなく宗介の事をにらむ。

当の宗介は頭の上に『?』を浮かべて……。



「別に相良くん変な事言ってないよ?俺がいるから大丈夫だって。わたしに心配するなって言ってくれただけだ
もん。」

「あう……。」

「……なんだかよくわからんが…とにかく千鳥、食べろ。」

「も…もう!」



宗介からさじをぶんどり、結局かなめは自分で全部食べてしまった。

その横で恭子が『なんだ、もう終わり…?』と呟いたのを誰も聞いていない。





その後……かなめはさっさと眠ってしまった。



「む。いかん………。」

「どしたの?相良くん。」

「薬を飲ませていなかった……。」

「え…そうなの……?あ…ねぇねぇじゃあ……。」

「…………………………それは……千鳥が怒るのでは…?」



脂汗を一筋たらして答える宗介。



「言わなきゃバレないバレない♪それとも相良くんはカナちゃんをこのままにしといてもいいの?」

「む…むぅ……。」



恭子の提案とは一体……?

しかもバレなければ大丈夫と言っておきながらしっかりデジカメで証拠を残していたりする。

それには宗介が相当焦っていたが……。















真実は宗介と恭子の二人しか知らない……………。











あとがき。
どもどもー。風水流梨と申します。自称、そーかならぶらぶおんりー物書きです(笑
でも果たして今回のはらぶらぶなのかなぁ^^
風邪ひきかなちゃん。風水も季節の変わり目にはすごく弱かったりします。
みなさんもお気を付けて〜。

はてさて……。最後にこの二人はなにをやらかしたのですかね☆

キーワードは「薬を飲んでいない事」「かなめが怒りそうな事」「デジカメで証拠を残せそうな事」
ですかねぇ〜(笑

それでは。最後まで読んで下さりありがとうございました〜。




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