『放課後に』










彼と彼女が三年に進級して早半年。

すでに生徒会役員ではないのだが、元役員という事で今の役員を手伝いに来ていた。



「じゃあ来賓関係はこれでいいから…あとはそれぞれのクラスの出し物関係ね」

「はい。ありがとうございます!」

「まあ他にも何か分からない事があったら聞きに来て。放課後は大抵三年の四組にいると思うから」

「分かりました」



林水の後を引き継ぐ現生徒会長との話し合いを終わらせ、かなめは自分のクラスに戻ってきた。

三年生と言えば受験生なのだが、この学校行事…文化祭の時ばかりは受験生も何もなく…
クラスのみんなで文化祭の準備をする。

かなめは去年に引き続き学級委員をしているので大忙しのようだ。



「ごめん。遅くなっちゃった」

「いや。ご苦労だったな」



ちなみに相方とも呼べる男子の学級委員は宗介だったりする。



「飾り付けとか準備しなきゃならない事はみんながしてくれるけど…
 必要経費の管理だけは任せられないもんねぇ…」

「さすがにこればかりは代表者以外に手伝ってもらうわけにはいかないからな」



一応生徒会の方の手伝いもしているかなめにとって、
連日忙しい日が続いているためいい加減つかれがピークに達してきているようだ。

それでも進行の上手なかなめなので…めんどくさがるクラスの係決めも
立候補を出したりせずに勝手に決めてしまったようだ。二年の時の修学旅行の時のように…。

そのおかげあって早くに準備を始める事が出来たのだが…
それでもその日が近づくに連れてやらなければならない事が後から後から出てきているようである。



「ではもう一度計算のし直しを……」

「うん…ごめん…やっといてくれる? んでもってその間少しでもいいから休ませて」

「…………了解した。少し待ってくれ」



一応自分も学級委員なのだが、結局のところかなめに言われた事しか出来ないので
まるで仕事をこなしていないと思えてならない宗介。

だが、どんなに頑張っても自分ではやはりなにも出来ない同然なので
言われた事を精いっぱいこなそうと誓った。



「よし…問題なし。千鳥、計算が終わった。特に問題もな………」



何もミスがなくてホッとし、それをかなめにも伝えようとしたところ…
かなめは静かな寝息を立てていた。よほど疲れていたのだろう。

どのみち今日しなければならないのははお金の計算だけだったので、
下校時刻まで寝かせてやろうとそっとしておいた。

そしてしばらくすると。



「やれやれ、やーっと終わったぜ。お、相良じゃん。何してんだ?」



別のところで準備をしていたクラスメイトの孝太郎が教室にやってきた。
帰るべくかばんを取りに来たのだ。



「小野寺か」

「お。千鳥また寝てんの?」

「ああ。クラスの準備以外の事もしていたからな。ところでまたとは?」



孝太郎のまたという発言に疑問を持ったようである。

またと言うからないはこのように眠ってしまった事が以前にもあるという事。

最近は本業の方にも呼び出されていないのでずっと側にいた宗介。

その宗介が知らないうちに眠っていたのだろうか。



「ああ、一年の時なんだけどな。やっぱり放課後に疲れてこうやって寝てた事があるんだよ。
 んで、ミス陣高への推薦諦めたんだよなぁ、あの時は」

「ミス陣高? ああ、あれか。なぜ諦めたのだ?」

「だってよぉ…千鳥のヤツすっげえいびきかいてたんだぜ?
 さすがに幻滅。せっかく美人なのにな。あ、これ俺が言ったって事千鳥には言うなよ! じゃーな」



さすがの宗介もかなめがいびきをかいているところなど見た事などないので想像が出来ない。

ミス陣高の事は去年経験したのでなんとなく思い出す。

あの時のかなめはかなめらしくなかった…と今でもまだ覚えていた。



「でへへへへへへへ」

「? 千鳥?」



その時、妙な声がかなめから発せられる。どうやら寝言のようだが実に色気がない。



「待ってなさいよぉ………全部平らげてやるんだから〜。じゅるーりじゅる〜り〜〜♪」

「食べ物の夢か」



まったくもって色気がない。おまけによだれまで垂れていた。

ここに孝太郎がいたらまた幻滅されていただろう。

しかし今ここにいるのは宗介だけ。

もちろん彼がかなめを見捨てるなどという事はしない。そして幻滅したりも。










宗介はさりげなくよだれを拭いてやり…下校時刻がくるまでの間ずっと彼女の寝顔を眺めていた。








Fin






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