12月24日。
ライトアップされたクリスマスツリーの下、かなめはツリーに寄り掛かりながら、ふと呟いた。
「寒いなぁ……」
夜空を見上げると、星の海がある。空気の淀んだ東京でこれほどの星が見えることは滅多に無い。
その星達の真ん中に王であるかの様に月が佇んでいる。
こんなにもこんやは美しい。何に。
「はぁ、寒い……」
冷え切った手をこすり合せながら、ふうっと手に息を吹きかける。
鉄のように冷え切った手が、ほんの少しだけ温まった。
「仕事が終わって直ぐに駆けつける……っていったけど幾らなんでもコレは遅すぎでしょ?」
左腕の腕時計にちらりと目をやる。約束の時刻は7時なのに対して、現在の時刻は8時。
既に1時間という時間が経過しようとしていた。
ああっ、もう。
こんなにいい晩なのに。星だって綺麗だし、月だって綺麗。
雪も振りそうでホワイトクリスマスとか、誕生日に雪だねーとか、喜べそうなのに。
いつもなら。
しかもなんで、遅れそうな日に限ってこんな場所に指定するのよ!?
よりによってこんな目立つクリスマスツリーの下に!
これじゃ、あたしが彼氏がいなくて強がっている女みたいじゃない。
「あのばか。もう来たら絶対に許さないわ……」
などどうにか強がっていると。
背後から知った声が聞こえた。やや声は高く、そしてどこか自信満ち溢れた声。
「あ、かなめじゃない」
「み、瑞樹!?」
「何よ。その驚きようは?」
「いや、なんでここにいるのかなあって。思っただけ」
「あたしはねー。一成くん待ち合わせ。一成くんと熱っい夜を過ごすの。」
語りながら瑞樹は目をつむり、うっとりとムードに浸る。
自己陶酔者の典型的な症状だなぁ。かなめはそう思いつつも、突っ込みを入れるのは止めた。
千鳥かなめの法則その1。余計なことは言わない。
「はあ。そー」
とりあえず無難な返事を返しておく。
「そーよぉ。あ、一成くーん」
唐突に瑞樹は振り返る。足跡で判断したのだろうか?
人間レーダなのかも。瑞樹につられて振り向くと、走ってきたのだろう。
息を切らし、額に汗を浮かばせている椿一成がいた。
「お、おう。瑞樹。ただ……あんまり大声で呼ばないでくれ」
「もう、一成くんの、て・れ・や・さ・ん」
「人前でくっ付くなー!」
抱きつかれて叫ぶ一成と、喜ぶ瑞樹。
「やれやれ騒がしいわねぇ……」
やってられないわ。かなめはそう呟いた後、ため息をもらした。
▼NEXT
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||