『 避暑めぐり 』










地球温暖化現象。

緑は減り、砂漠は増え…オゾン層に穴は開く。地球の自然はそれはもう深刻な問題になっていた。

人々の関心はまだ浅くとも、これには気が付くだろう。

年々地球の温度が上がっていることに。

そして…それに悩まされる少女が一人……ここにはいた。










「うそ…。」



八月の猛暑。今年は最高気温が過去観測した最高をも上回る真夏日が続いていた。

午前中の涼しい時に掃除や洗濯終わらせたかなめは、クーラーをつけようとリモコンを手に取った。

そしてスイッチを入れたのだが……………。



「やだ、つかない。電池切れたのかな…。」



暑さをしのぐのに必要不可欠とも言えるクーラーが作動しなかった。

電池切れかもしれないと…替えの電池を探すと…
運良く同じ電池があったので取り替えてもう一度やってみる。

しかし……。



「わーん。やっぱりつかなーい。」



どうやら原因は電池ではないらしい。

かなめはこれでも控えめにクーラーを使用してきた。

昼間は一番暑い時間帯にしかつけていないし、夕方には必ず消している。

夜寝る時はしっかりタイマーをセットしている。



「とうとう壊れたかなぁ…。あ、もしかしたらフィルター掃除すれば…でも今日はもうめんどくさーい。」



やっとこさ掃除を終わらせたばかりなのだ。

いくらなんでもすぐさまクーラーの掃除など…やる気が起きるわけがない。

が、これからまだまだ暑いのは明らか。

掃除は明日やるにしても、問題は今日をこれからどうするかである。



「…………………………そうだ!」



なにか思いついたのか…出かける準備を始めた。

そして向かった先はというと………。



「……千鳥?」

「やっほー、ソースケ。」



目と鼻の先…宗介の部屋だった。めずらしく夏休みだと言うのに今は東京にいるらしい。



「上がってもいい? うちクーラー壊れちゃったみたいでさ…。」

「……そうか。だがこの部屋も今は暑いぞ。」

「え゛!?」



とりあえず中に入ってみると…たしかに涼しくはなかった。かなめの部屋となんら変わりない。

いくら生活感のないこの部屋にも、クーラーはしっかりついている。なのになぜついていないのか。



「まさか電気代節約のためつけないの?」

「そうではない。今作業中なんだ。」



なにを行っているのかわからないかなめはずかずかと部屋の奥にまで入った。

するとめに飛び込んできたのは、床に広げられた銃の数々。

どうやら整備の真っ最中のようだ。



「換気のいいところでしたいからな。」



たしかに窓は全開だった。かなめも充分納得した。納得したのだが……。



「あー………涼みに来たのに意味なーーーーい!」



暑さのせいでいらつき始めたいた。

だれが見てもいらついているのがわかる。もちろん宗介でもだ。

そんなかなめを見て素早く後片付けを始める。

もともとあとは片付けるだけだったので、それはすぐ終わった。



「もう入れてもいいぞ。」

「ほんと?」



途端に笑顔になる。まるで小さな子供ようだと思った宗介だが…それはあえて言わない。

宗介の了解を心待ちにしていたかなめはずっと手に握っていたリモコンでいそいそとスイッチを入れる。



「……………ソースケ〜。」

「なんだ?」



後片付けを先にしてしまったので、客人であるかなめにお茶すら出していなかったので、
それを用意しながら返事をする。



「クーラーつかない。」

「なに?」



リモコンのスイッチを何度も押している。しかしやはりつかない。

まさかと思うが宗介の部屋も壊れたのだろうか……。



「そういえば夕べもリモコンのききが悪かったな。」

「それって電池切れなんじゃ……。」

「かもしれん。」

「替えは? えっと…単4が二つみたいだけど……。」

「……………ないな。」



さすがになかったらしい。

元々そういう買い物を滅多にしない宗介が電池の買い置きなどしているはずもない。



「もー…来た意味全然ないじゃなーい!」

「そこのコンビニで買ってこよう。少し待っていろ。」

「あたしも行く。」



暑い部屋で電池が来るのを待つよりもコンビニで少しでも涼みたいのだろう。

リモコンを放り出して玄関へ向かった。

その考えが手に取るようにわかった宗介は、かなめに気が付かれないところで盛大なため息をつき、
苦笑いを浮かべた。





そこのコンビニといってもそれなりに歩く。

なるべく日陰を歩いていてもやはり暑いものは暑い。にも関わらず二人は手を繋いで歩いていた。

コンビニに着くなり、宗介は電池売り場に…かなめはアイス売り場へと直行する。



「ソースケ、これ買って♪」

手に取り目の前に見せたのはごく普通の百円アイスだ。

涼むのもそうだが、本当の目的はどうやらこっちだったらしい。

宗介はそのアイスと電池を持ってレジへと向かう。自分の分は買わない。かなめのだけだ。

コンビニを出ると宗介からそのアイスを受け取りさっそく食べ始める。

歩きながら食べるとは端からみると行儀がわるいようだが、かなめいわく……。



「だって溶けちゃうじゃない。」



なので食べるのだそうだ。

アイスはカップ型でスプーンを使って食べるタイプのものだ。

かなめは荷物を持ってきていない。実に食べやすそうに…楽しそうに食べている。



「ソースケほんとに買わなくて良かったの?」

「ああ。」



前にもこうやって二人でコンビニへ来たことがある。

その時もかなめは宗介にアイスをおごってもらったのだが…宗介は自分の分を買っていなかった。

今までこのような嗜好品を食べていなかったので宗介は自分から食べようとしないのだ。



「んー……………はい。」

「?」

「買ってもらったのにあたしだけってやっぱりわるいからさ。はい、一口だけだけど。」

「〜〜〜〜〜〜。」



宗介は思った。

このように気にかけてくれるのはうれしい。わけてくれるのもうれしい。それがたった一口でも。

だが………。

こんな道ばたで…。

時に場所をもこだわる彼女だが…なぜ自らがが起こす行動にはこんなに無頓着なのだとも思う。



「ほらー、溶けちゃうでしょー。早く。」

「あ、ああ……。」



つき出されたものを口にくわえる。



こうも恥ずかしく思っているのはやはり自分だけなのだろうか……。



「たまに食べるとおいしいでしょ?」

「…そうだな。」

「もう一口食べる?」

「……君の分がなくなるぞ。」

「あたしがそんなにあげるわけないでしょ。」

「ケチだな。」

「な………あんたどこでそんな言葉覚えたのよ…。」

「さあな。」

「はぐらかすな、こらソースケ!」



かなめから逃げるように距離を取る宗介。追いかけたいが、アイスのせいで激しく走れないかなめ。

その隙に宗介はさっさと行ってしまう。

結局、帰りの道はほとんど走ってきてしまった。



「あー、もう。アイスはほとんど溶けちゃうわ、汗はいっぱいかくは…最悪。
 さっさと、戻ってクーラーの部屋で涼むわよ。」



暑さでこれ以上問い詰める気にもなれないのだろう。部屋に戻るとすぐさま電池を替える。



「さー、これで快適な空間に早変わりよ〜。」



クーラーでここまで幸せになれるとはある意味単純なのか。

というよりは、もっと暑い地方になどとても行けないということだろう。

宗介も昔もっと暑い地にいたこともあったのだが…その時の話は口が滑っても言えない。



「……………。」

「……どうした?」

「…………………………つかない。」

「……………。」




















どうやら宗介の部屋のクーラーもご愁傷様のようです。





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