「ソースケ、ちょっと散歩でもしない?」


そう言って彼女は俺の手を取り歩き出した。






 『陽だまり』






彼女が突然こんな行動を起こすから正直驚いた。
今まで何度か彼女の手を繋いだことはある。
だがいつもそれは俺からで、手を繋いだ理由も敵から逃げる際、離れないようにと。


だから俺の中に想像もしていない感情が顔を出した。


ドキドキと。
すごいスピードで。
体中の全神経が全てその手に集まったかのようにそこだけが熱くなる。





何処まで歩くんだろうか。
手を繋いだ手がじんわりと汗ばむのがよくわかる。
気持ち悪くないのだろうか?

だが、彼女は俺の心配をよそにただ黙ったまま俺の手をぎゅっと繋いだまま隣を歩く。



だから俺も気にしないことにした。



ようやく落ち着いてきたところで俺はふと思う。
歩き出してからまだ一度も彼女と会話をしていない。
何か話したほうがいいのだろうか?
それともこのまま黙っていた方がいいのだろうか?



洒落た会話など出来ないことはわかっている。
それでも俺は・・・・・俺は彼女となんともない会話を交わしたくなった。





「千鳥・・・・・」
「なに?」
「いい天気だな」
「そうね」




こんなたわいの無い会話がすごく心地いい。




「何処へいくんだ?」
「ん――――――――わかんない」
「そうか」




目的など無く、あてもなく歩く。
たまにはこんなのもいいだろう。




「あ!・・・・」



突然彼女が声を上げる。



「どうした?」



「あそこ、桜が綺麗」



彼女が指差した場所。
そこには一本の桜の木が満開の花を咲かせていた。



「行ってみない?」
「あぁ、そうだな」



そして俺達は桜の木下へと向かう。





そこにはただ一本だけ大きな桜の木が立っていた。

俺達は桜の木の下にもたれかかるように座る。
すると、彼女はそっと俺の肩へともたれかかった。



「気持ちいいね」
「あぁ・・・・・」

陽だまりの下。
俺達の影が重なる。



風が吹くたびに桜の花びらが空を舞い遠くへと飛んでいく。








「ねぇーソースケ」
「なんだ?」
「また、来年も一緒に桜を見ようね」
「あぁ・・・・」
「約束だよ」
「肯定だ」




手から伝わる体温がとても心地よくて
俺達はただ黙って流れる雲を見ていた。









このままずっと時間が止まればと
お互いを感じていられればと。











(Fin)







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