冷凍庫の中。
誰が見ても邪魔にならないか?っと思うような発泡スチロールの箱を奥の方から取り出し
彼女はその中を見た。
そこには20センチほどの雪だるまが2つ彼女を見つめていた。

それは去年の冬、彼女と彼が作った雪だるま。





『初雪−雪だるまにのせて−』





「千鳥・・・何をやっている?はやくしないと遅れるぞ」

しゃがみこんで何かをしているかなめに宗介は声をかけた。

「うーーーん。ちょっとね」

それでもかなめはなかなか立ち上がろうとしない。
不思議に思った宗介はかなめの前へと回り込んだ。

「なんだ、それ?」

目の前に現れた宗介はかなめの手をみて聞いてみる。

「これ?雪だるま」
「雪だるま・・・・」

聞いて宗介は繰り返す。

今年初めての雪。
思ったよりも積もったのは確か。
しかし、雪だるまを作れるほどたくさん降ったわけではない。
なのにかなめは車や道路に積もった雪を出来るだけ綺麗な雪を集めて雪だるまを作っているのだ。

「こんな雪の量でか?」
「そうよ」
「もっと雪が降った日でもいいではないか」
「そうなんだけどね。なんとなくすごく作りたくなって。あんたも作ったら?」
「いや、俺は・・・それに、このままだと遅刻するぞ」
「大丈夫よ、さっきニュースで電車止まってるって言ってたから」
「この雪の量でか?」
「っそ。場所によってはもっと積もってるんでしょきっと」
「しかし、電車が止まっているなら他の手段が」

宗介はかなり心配しているようだ。
理由はひとつ。今日の1時間目が古典だからだった。

「大丈夫よ。こういう日はだいたい1時間目は授業にならないんだから。
「それならいいが・・・」

宗介は納得いくようないかないようなそんな気持ちでかなめの様子を見ていた。
するとかなめは宗介の足元を引っ張ると言った。

「あんたも座って作ったら?」
「俺もか?俺はいい」
「なんでよ。めったに作れないわよ。それに、あんた雪だるまなんて作ったことないでしょ?」
「そうだが・・・」
「じゃ、作りなさい」

最後は命令。
言われて宗介も仕方なく同じように作り出した。









10分ほどして20センチぐらいの雪だるまを作った宗介はかなめに声をかけた。

「これでいいか?」
「そうね・・・いいわ。初めてにしては上出来よね」

かなめは嬉しそうに笑う。

「上出来か?まぁー丸めてくっつけただけだからな」

言われて嬉しいのかどうなのかわからずただかなめの手元にある雪だるまを宗介は見ていた。

すると、ふと思い立ったようにかなめはその雪だるまを持ったまま部屋へと走っていった。
かなめのいきなりの行動に驚く宗介はただかなめの後ろを追いかけた。

「千鳥・・・どうした?」
「いいこと思いついたの」

言ってかなめは宗介に雪だるまを手渡すと急いで部屋の中へと入りなにやら
ドタバタと物音を立てると何かを持って現れた。

「なんだ?」

宗介は不思議そうに聞く。

「発泡スチロールの箱よ」
「見ればわかる。それで何をするんだ?」
「ん?これ・・・これはね、こうやって――――こうするの」

宗介の手元から雪だるまを受け取るのその中へとしまいこんだ。

「なぜ、そんなところへ入れる?」
「これをね、このまま冷凍庫にしまって来年の初雪が降った時に出すの」
「そんな事してどうする?それに1年も雪がもつのか?」
「どうするって意味はないわよ。ただ、今年の雪はあたり前だけど
 来年の冬にはもうないわけじゃない。だから、今年の雪を来年の雪に会わせてあげるのよ」
「会わせる?」
「っそ」

かなめは嬉しそうに言う。
しかし、宗介にはそれが理解できない。

「それをすることによって何か意味でもあるのか?」
「意味?そんなものあるわけないじゃない。ただあたしがしてみたいだけよ」
「そうなのか」
「そうよ。なんならあんたも一緒にする?来年初雪が降ったとき一緒にこの雪だるまを外に出す?」
「俺もか?」
「そう。それに気になるでしょ?この雪だるまが冷凍庫の中で1年を越せるのか」
「そうだな・・・・それもいいかもしれないな」

宗介は表情は変わっていないが嬉しそうに返事をした。

来年の今頃・・・・それは宗介にとっては何処でなにをしているかなんてなんの保障もなかった。
しかし、今この時、来年の今頃こうして一緒にかなめといることが出来るという保障が宗介の中にできた。
それだけで宗介はとても嬉しかった。


「よし!じゃ、冷凍庫にしまってくるね。」

それにそろそろ学校に行かないとまずいし。っとつけたし雪だるまをしまいに行った。


二人は走って駅へと向かう。
辺りの雪はもうすでに溶け始めほとんどの雪は水となって流れてしまっていた。
かなめと宗介が作った雪だるま以外は。








◇◆◇◆◇◆◇◆





かなめはそっとその雪だるまを取り出した。
雪というよりはほとんど凍りに近くなっていた雪だるま。
それを庭に積もった雪の上へとちょこんと並べる。
その風景をみて納得するとまた部屋へとはいって行った。

それから2階の寝室へと向かいそこに横たわっている人物の頬をたった今雪だるまを触った手で触れる。
あまりの冷たさでその人物は飛び起きた。


「ソースケおはよう」
「おはようではないぞ。いきなり何をする」
「何をって起こしたのよ」
「起こしてくれるのはありがたいが起こし方にも方法があるだろう。そういう起こし方は心臓に悪い」
「ごめん、ごめん」

かなめは謝りながらクスクスと笑った。

「そうそう・・・・雪降ったよ」
「初雪か?」
「っそ」
「もう、そんな季節か・・・・そうだ、例のあれは?」
「もうちゃんと外に出してあるわ。だから着替えて降りてきなさいよ」
「そうだな」
「じゃ、あたしは先に降りてるわよ」
「了解した」

かなめは嬉しそうに1階へと降りていった。

しばらくして宗介は1階へと降りてくるとそのまま庭へと向かった。
そして、そこに並べてある雪だるまをみて言った。


「案外、綺麗な形で残るもんなんだな」
「あたしも驚いたわよ。でも、雪じゃなくて凍りだけどね」

言って笑う。

「去年の初雪と今年の初雪の出会いか・・・・」
「ん?なにか言った?」
「いや、何も」
「っそ。じゃ、そろそろ朝食にしますか」
「もう、いいのか?これは」

宗介が雪だるまを指差して言うと
「うん。その子達は今年の雪と一緒に自然に返すのよ」っと言ってかなめは部屋へと入った。




あの時、宗介と1年後一緒に入れるかわからなくて雪だるまをネタに
来年も一緒にいれるっという保障が作りたかった。
そして変わらず宗介はかなめの傍にいる。


かなめは心の中でそして、1年間ありがとうとつぶやいた。





雪だるまは今年の初雪と共にとけ水となった。
そこにはもう何もない。
あるのはあの日とかわらないお互いの笑顔だった。









(Fin)












あとがき
今回はちょっとまとまりのないような感じの話しになってしまったかもなのです。
なのに最後まで読んでくださってありがとうございました。





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