銀色の世界がまるで時間が止まったかのように2人を幸せな気持ちにさせた。
なにもかも忘れさせてくれるかのように・・・・。



『晴れた日に』



「んんーーーーーーーー」

かなめはむくりっとベットから起き上がると大きく伸びをした。

「あーーーだりぃーーー」

相変わらすの低血圧ップリは健在で重そうにベットから腰を上げるとカーテンを開けた。

「眩しい・・・」

気持ちいいほどの朝の光ががかなめの部屋へと差し込んだ。
冬になってからは雪ではなく長雨が続いていた為かこんなに気持ちいい晴れた日の朝は久しぶりだった。
時計を見ると時間はもうすぐ8時を指そうとしていた。
休日にしてみれば随分と早い目覚めだった。

「あーーーーー。早く目が覚めたなー」

もう一度眠ってもよかったのだがそうすると今度は何時ごろ目覚めるか自身がない。
そう思うとやはりここまま起きてする事を先に済ましてしまった方があとあとらくだと起きる事を決めた。
そんな風にブツブツといいながらすっきりとさすためにいつものようにバスルームへと向かう。

朝からのシャワーは何度浴びても気持ちいい。
低血圧の彼女にとっては決してなくてはならないものだった。
バスルームから気持ちよくすっきりとした顔で出てくると
相変わらずの腰まで長い髪をドライアーで乾かし、邪魔にならないようにと後ろで
束ねる。そして顔をパンパンっと2回ほど叩き気合を入れた。

「さてっと・・・・・何からはじめるかな?」

っとその前に供えてあった菓子パンを口へとほうリ込む。
その後、コーヒーをカップに注ぐと一口飲みほこりが入らないようにとキッチンへ置いたまま
行動を開始した。



大きくバルコニーのドアを開けると冷たい風が部屋へと入り込んできた。

「寒いーーーー。」

ブルッと体を震わせながらも気合で行動移そうとする。
っと、かなめの視界に入ってきたのは斜め向かいにあるアパートだった。
彼女が見つめるのはその一室。
しかし、その部屋にはカーテンが閉まっていた。

 (ソースケまだ帰ってきてないのかな?)

その部屋の住人相良宗介は先日から任務でまた日本を離れていた。
予定では昨晩のうちに帰ってきているはずなのだがかなめにはなにも連絡が入ってなかった。

「まぁ、いっか。」

そんなことをポツリと言った瞬間かなめの携帯電話が鳴った。

「はい。はい。」

返事をしながら携帯へと向かう。
手に取ると表示されているのは『相良宗介』だった。
その表示をみてかなめは少しだけ嬉しく思うと冷静を保ち話した。

「もし、もし?」
「千鳥か?」
「そーよ。」
「もう起きてたのか?」
「起きてちゃ悪い?」
「・・・・いや、そんな事はない。」
「朝早くからすまない。」
「本当よ。休日なのに。」

っと言いつつもかなめの心はそんな風には思ってない。
そして、一瞬の沈黙が続く。

「で、こんな朝早くなら何よ。」

その沈黙を破るようにかなめは言葉を切り出した。

「そうだった。千鳥、今日は暇か?」
「うーーーんそうねぇー」

かなめは考えるそぶりをする。
実際のところ今日は何の予定もなくただ単に早くに目が覚めたので掃除をしようと
しただけの事だった。
しかし、かなめはすぐには返事をしなかった。

「暇ではないのか?」

宗介はもう一度聞き返す。

「そうねーーーーー。まぁー暇といえば暇だけど?なに?」
「いや、ちょっとつきあって欲しいところがあるのだが。」
「つきあって欲しいところ?」
「あぁ。」
「いいわよ。で、どこ?」
「それは今は言えない。」
「言えないってあんたまさか変な所へ連れて行く気じゃないでしょうね?」
「それは大丈夫だ。安心しろ。」
「あっそ。わかったわ。」

かなめは不審に思いながらも一応は納得した。

「それであたしはどうすればいいの?」
「そうだな、どれくらいで準備が出来る?」
「そうねーもう後は服を着替えたりするだけだからそんなに時間はかからないけど。」
「そうか、では30分ほどしたら迎えに行く。」
「わかったわ。」
「そうだ、出来るだけラフな服装で着てくれ。」
「え・・・うん。わかった。」
「あとコートなど厚手の上着もだ。」
「あ、うん。」

そして電話が切れた。

 (ラフな服装ってしかもコートって?・・・・いったいどこへ行くつもりなんだろ?)

そんな事を思いながらかなめは着替えると、掃除しようと出した物を片付けた。





しばらくして玄関のチャイムが鳴った。
扉の穴から覗くとそこには宗介が立っていた。しかも珍しい本当に珍しい姿で。
扉を開けて一番にかなめの発した言葉は「おはよう」ではなく「どうしたの?」だった。
宗介の服装はかなめが今まで一緒にいて初めてみた姿だった。
革ジャンにジーンズというすごくラフな服装。
聞いてみればやはり自分で購入したものではなくクルツからの借り物だそうだが。

「靴も出来れば運動靴がいい。」
「え?あ・・・運動靴ね。」

そして下駄箱から運動靴を取り出し履くと、早々に宗介は一言「では、いくぞ。」
っとかなめの部屋を後にした。


しばらく歩いた後タクシーを拾うと行き先は空港だった。

 (空港?)

かなめは今からいったいどこへ行くつもりだ?っと内心不安に思いながらも
黙って隣に座っていた。
するとその様子を見ていた宗介がポツリと言った。

「今から、ある場所へ行く。2〜3時間はかかるが我慢してくれ。」

その言葉に「2〜3時間てあんた!!」っと怒りそうになったが宗介のまじめな顔を見て
かなめは言うのを辞めた。
空港へ着くとミスリルの自家用ヘリに載せられた。
「あんたこんなの勝手に利用していいの?」っとかなめが聞くと
「大丈夫だ。そんな事は気にしなくていい。」っと言ったきり何も言わなくなった。

宗介は操縦席に行ってはパイロットと耳打ちで会話をする。
それを繰り返したのちかなめの隣へやってきた。

「千鳥。もうすぐ着く。ちょっと寒いだろうからこれを持っていろ。」

宗介はポケットの中から『ホカ〇ン』を取り出しかなめに渡した。

「あ・・・ありがと。」

そしてかなめが何かを聞こうとした瞬間それよりも先に宗介が「着いたぞ。」っと言った。
扉が開かれかなめがヘリから降り足を下ろすと「サクリ」っと小さな音がした。

  (ん?)

そして辺りを見渡すとあたりは一面の雪景色だった。

「え!?なに!?ここ???」

思わず驚いたように声を発する。
すると宗介は「雪だ。」っとそのまま言った。

「あんた・・・それはわかってんのよ。ここはいったいどこだ!!って聞いてるの。」
「俺にもよくわからん。」
「わからんて・・・・」

かなめは少しあきれた。
そんなかなめの事などまったく気にせず宗介は淡々と話す。

「ここから少しの間歩く。くれぐれも転ばないようにしてくれ。」

そう言うと、ある方向へと歩き出した。



「ねーーーちょっとどこ向かってるの?」
「もうすぐ着く。」
「もうすぐ着くってもう30分も歩いてるよ。」
「もうすぐだ。」

いくら舗装されている道でも30分歩く雪道はかなめにとってもきつかった。
そしてかなめが「もぉーーーいや!!」っと言ったと同時に宗介が「着いたぞ。」っと
言った。

「そこを抜けてみろ。」

そう言われてかなめは先に歩いていった。

「・・・・・・・・・・。」

その景色をみてかなめは空いた口がふさがらなかった。
その景色は湖らしきもを中心に木々がそびえ立つ真っ白な銀世界だった。

「綺麗ーーーー!!」

かなめは感嘆の声を発する。

「君なら喜んでくれると思った。」

かなめはその声に反応し振り返ると満面の笑みを浮かべうなずいた。

「もう少し先まで歩いても大丈夫だ。」

かなめはうなずき歩いていった。

  サクサクサク

かなめの足音だけが響いた。
そして、たぶん湖の上だろう所まで行くと辺りを見回すとまるでそこには自分しか
いないような気分になった。
嬉しくなり足元の雪を掴む。
それは今さっき積もったのであろうとてもさらさらとした粉雪だった。
その雪を自分の上へと放り投げる。
さらさらとその雪がかなめの頭上へ舞い降りる。
それはまるでこの世のものとは思えないほど綺麗な姿だった。
そんなかなめの姿をずーーっと見つめていた宗介に向かってかなめは叫ぶ。

「ソースケもおいでよ!!」

かなめに呼ばれ宗介もまたかなめの傍まで歩いていった。

「どうだ?気に入ってくれたか?」
「うん!!」
「それはよかった。」

宗介は少し照れたように微笑む。

「こんなところどうやって見つけたの?」
「ここか?たまたまいつもと違うルートで帰ってきたら見つけた。」
「ふーーんここって日本?」
「たぶんな。」
「そっか。」

宗介も辺りを見回す。

「ここの上空を通ったときにきっと君なら喜んでくれるだろうと・・・・」
「うん。ありがとね。」

かなめは本当に嬉しそうに宗介へとお礼を言った。

「夕方になるともっと綺麗なのだが・・・」
「うん。」
「ヘリを待たせている時間が・・・ない。」
「いいよ。これだけ綺麗な景色を見せてもらえただけで充分だよ。」
「そうか。」
「あと、どれくらいここにいれる?」
「10分ぐらいだ。」
「そっか。あぁーあ。こんな事ならカメラでも持ってくればよかったな。
だってソースケどこへ行くとも何も言わないんだもん。」
「すまん。」
「いいわよ。そのかわりまたいつかここへ連れてきてね。」
「あぁ。」
「約束だよ。」
「了解した。」


そして、かなめは残り少ない時間を自分のこの目にこの景色を焼き付けるため
釘射るように景色を眺めたのだった。


「それにしても今日は晴れてよかった・・・。」

宗介は一人ポツリとつぶやいた。

「ん?何か言った?」
「いや、何も。」
「っそ。」



この時期を逃すとここは真っ白の雪で覆い尽くされ人が入れない場所になってしまう。
この場所へやってくるのは今日が最初で最後の日だったのだ。



「そろそろ行くぞ。」
「え?うん。あーーー楽しかった。」
「それはよかった。」
「宗介は疲れてない?」
「どうしてだ?」
「だって、帰ってきてすぐだったから。」
「問題ない。」
「そう?」
「あぁ。」




帰りのヘリの中でかなめは宗介の肩にもたれかけ眠っていた。
そして、宗介もまた同じように眠っていた。
彼にとってはどれだけ疲れていてもかなめが一緒にいてくれるだけで彼女の笑顔が見れるだけで
それだけでどんな疲れも一気に吹き飛ぶそんな気がしたのだった。





FIN





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