『淡い想い』







誰かに言われなければ気づかない想い。

それは、自覚がない方が言えるといえるが・・・・・

知ってしまったらどうなるか?







東京のとあるマンション。
ここは、少し前まではある機関のセーフハウスであったが今現在は個人の所有物だ。

その部屋の主、相良宗介はシャワーから上がってくると一点をジロリと睨みつけた。
缶ビール片手に(もちろんノンアルコールである)大笑いしながらテレビを見ているクルツ・ウエーバーがいた。

今、彼は休暇を利用して東京へ遊びに来ている。
宗介は来るなといったのだがそれを無視して遊びに来たのだ。


「おい!クルツ!!酒ばかり飲むな!!」

我が物顔でくつろいでいるクルツに宗介は不機嫌に告げる。
だが、クルツは「大丈夫、大丈夫」とだけ返事を返すとそのままテレビを見続けた。


宗介は今かなり不機嫌だった。
それは、マンションへ帰ってくるまでにいた先での出来事だった。


それは、1時間ほど前まで宗介をクルツは向かいのマンションに住んでいる千鳥かなめの部屋に居た。
かなめは宗介が東京へ来るということを聞き夕飯に招待したのだ。
宗介はかなめにそんなことはしなくていいと言ったのだが、かなめはそんな宗介の言葉など無視して夕飯に招待した。


腕によりをかけて作ったかなめの手料理はいつもより豪華で美味しかった。
その料理の感想を素直に告げるクルツ。
その言葉に心から喜ぶかなめ。
そんな2人の会話を聞きながら宗介は相変わらず無言で黙々と食事を進めていた。
3人いるはずのかなめの部屋なのにクルツをかなめの声しか聞こえない。
時折、クルツが宗介に話を振ったり、かなめが「美味しい?」と聞くのだが
宗介は相変わらず「あぁ」や「うまい」の一言だった。


「ソースケ、せっかくかなめが美味しいもの作ってくれているのにお前もうちょっと
気のきいた言葉をいえよー。ったく・・・・お前はぁー」

呆れ顔で告げるクルツに宗介は「うるさい」とだけ返事を返す。

「ったく・・・・かなめぇーこんな男に手料理なんて作らなくていいんじゃない?
何もいってくれなきゃ作ってても嬉しくないだろ?」
「・・・・・まぁーねぇ・・・・・でも、もう慣れたし」
「慣れたって・・・・ったく・・・・」

クルツはかなめがそういうのなら自分はこれ以上言う必要はないと箸をすすめた。



それから、しばらくしてすっかり食べ終わった3人はそれぞれかなめの部屋でくつろいでいた。


宗介は新聞を見、クルツはテレビを見、かなめは食後のコーヒーを入れていた。
そんなかなめの様子をみて宗介は新聞を読むのをやめると、かなめの傍へ行き
「手伝う」と一緒にコーヒーを入れた。

2人でなにやら会話をしながらコーヒーを入れている様子をクルツは聞き耳を立て
横目で見ながら様子を伺っていた。



  ふ〜ん・・・・・・
  あいつもあんなことするんだ・・・・・
    やっぱりあいつにとってかなめちゃんは特別か・・・
  でも、自覚があるんだろうか?



クルツはそんな宗介の行動をみて少しだけ見直した。
だが、事件はこの後起こった。

このままで終わらすのはなんだか納得がいかないと思い出したクルツは少し2人を
からかってやろうと行動にある行動に出たのだ。



コーヒーを入れ終わったかなめはカップを両手にカップを持ちクルツへと持っていった。




「クルツくん、どーぞ」
「お!サンキュー」

クルツは普通にそれを受け取ると受け取った方とは違う手でかなめの腕を掴む。
突然のクルツの行動にかなめは「な・・・なに!?」と驚く。

「ここに座れば?」

クルツは自分の座っているソファーの開いている部分を目で合図する。

「え・・・・いいわよ、あたしあっちに座るし」
「あっち?あっちってソースケのいるところ?」
「え・・・ん・・・・まぁーーーそうだけど」

かなめはチラリと向かい側に座っている宗介を見る。
すると、宗介はただ黙ったまま二人の行動を見ていた。

「いいじゃん、いいじゃん。こっち座ってもあっち座っても一緒だろ?だったら、俺の隣に座ればいいじゃん」

強引に腕を引き、クルツはかなめを自分の隣へ座らそうとする。

「ち・・・・ちょっと魔ってよクルツ君!わかったから!!座るから!!ったく・・・・・
 そんなに強く引っ張ったらこぼれるでしょーが!!」

かなめはムスッとすると仕方なくクルツの隣へと座った。

その間、宗介はただ黙って見ていた。
内心はかなり気に入らない様子で。



それからのクルツの行動はさすが女性になれているというだけあり、ずっとかなめを楽しませていた。
それが宗介はかなり気に入らなかった。




そんな出来事があってからか、宗介のマンションへ2人で帰ってきてからも
宗介はクルツに対して機嫌が悪かったのだった。





「宗介、なにご機嫌ななめなの?」

理由がわかっているのにクルツはわざわざ宗介に聞く。

「うるさい」
「ねぇーねぇー」
「黙れ!」
「宗介ちゃん、こわ〜い」
「それ以上言ったら追い出すぞ」
「はいは〜い」

と、返事はするもののそれでも、クルツは冗談を通す。

「あんまり、ピリピリしてるとはげちゃうよ〜」
「だまれと言っているだろう」

すると今度は真面目な顔でクルツは言う。

「なぁー宗介。なんでお前そんなに機嫌が悪いわけ?」
「機嫌が悪い?俺が?俺はいつもと変わらない」
「そう?かなり機嫌悪いけど・・・・もしかしてお前気づいてない?」
「なにがだ?」
「なにがってかなりイライラしてること」
「俺はイライラなどしていない、する理由がない」
「してるよ、かなりしている。お前、もしかして自覚がないのか?」
「自覚・・・・?なんのだ?不機嫌の自覚か?」

宗介の言葉にクルツは「はぁー」と大きなため息をつく。

「お前ねぇーいい加減気づけよ」
「なにがだ?」
「言わなきゃわかんねぇーのか?」
「だから、何がだ」
「おいおいおい・・・・・」

  鈍感もここまできたら最悪だな。


クルツは情けないと頭を抱える。
そして、宗介に言った。


「お前、かなめちゃんが俺と楽しそうなの見ててイライラしてただろ」

ズバリつかれ、宗介は返事に困る。

「・・・・・・・」
「お前は、自分以外の男とかなめちゃんが楽しくするのが嫌なんだよ。
 だから、不機嫌なんだよ。ったく・・・・・・」
「な・・・・何を言っている」
「だ か ら、かなめちゃんのことが好きなんだよ!自分以外の男と仲良くして欲しくないの。
 だから、俺に対して不機嫌なの!わかった!!」
「だから、どうして俺が不機嫌になるんだ?」
「あぁぁぁぁーーーーもぉぉぉぉーーーーーーーー」

クルツは立ち上がり宗介に向かって叫ぶ。

「お前はかなめちゃんが好きなの!!好きだから自分以外の男と仲良くしていると
 イライラするし機嫌が悪くなるの!わかったか!!」

すると、宗介の顔がみるみるうちに赤くなっていった。

「お・・・・俺が、千鳥をす・・・好き?」
「そうだ。いい加減に自覚しろ!!見てるこっちがイライラする」
「いや・・・・あの・・・・・それは・・・・・」

宗介は『好き』という自分の感情に戸惑う。

「お・・・・俺は・・・・・」




その場で少しパニックに陥っている宗介を横目で見てクルツは
「俺もシャワーしよーっと」といってその場を離れていった。




1人その場に残された宗介は今気づいた自分の想いの居場所を探していた。








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