木漏れ日に揺れる影ふたつ
風に揺れていた



『ある日の風景』



「ねぇ恭子、ソースケ見なかった?」
「相良君?見てないなぁー。どうして?」
「いや、あいつにね昼までには戻って来いって言っておいたのにまだ戻ってこないから。」
「そうなんだ。」
「ったく・・・・あいつの分まで食べてやろうかしら?」

ぶつぶつとかなめは怒っていた。

事の発端はこうだった。
今、かなめ達数名は川へ来ていた。
メンバーはかなめ、宗介、恭子、瑞樹、オノD、風間だった。
せっかくの春休み、みんなでどこかへ行きたいねっと言い出した恭子の提案で
瑞樹が「じゃーバーベキューにしよう!!」っと言い出したからだった。
メンバーを決めたのは恭子と瑞樹。
本来ならば椿も参加させるつもりだった。
しかし椿は「そんなものに大切な休日を使ってたまるか。俺にはバイトがある」っと言い一度は断り
恭子が「かなちゃんも来るよ。いいチャンスかもよ?」などと耳打ちをした事によって一度は
参加しようと思ったのだが瑞樹が参加する事を知りもし参加したとしても瑞樹のもう攻撃もとい
言い寄られてその1日は終わってしまう千鳥どころではないと結局は不参加を決めてしまったのだった。

そして今現在6人はバーベキューの準備も完了しそろそろはじめようっというところだった。
なのに、宗介は戻ってきていない。
もともと6人はそれぞれ自分の役割を決められ準備をしていた。
もちろん宗介にもその役割はあった。
薪を拾ってくる役割。
昔からこういうことに慣れていた宗介は「そんなこと朝飯前だ」っと、
あっという間に準備をしてしまった。
そして、有り余った時間を利用して「俺は少し訓練してくる」っと
川の脇へと続く森の中へと消えて行ったのだった。

そしてそれから2時間宗介は戻ってきていない。
30分ほど前までは遠くの方からなにやらものすごい音が響き渡ってきていたがそれも今はピタリと
やんでいた。なので、かなめもそろそろこちらへ戻ってくるとばかり思っていたのだった。
しかし、いまだに戻ってくる気配はなかった。

「ったく・・・・あのバカ何処でないやってんだか。」

かなめがイライラとしていると瑞樹が
「いいんじゃない?ほっとけば。そのうちお腹が減ったって帰ってくるわよ。」っと言ってきた。
かなめも初めはそう思っていたのだがよく考えてみると
宗介は訓練などに真剣に取り組み始めると食事をする事を忘れるくらい真剣になる。
それを考えるとほっとけばいつまでたっても帰ってこないように気がしていた。
かなめが渋っていると恭子がかなめの背中を叩き
「とりあえずさ、先に食べようよ。相良君の分はとっておいてさ。
それでいいじゃないいいから始めよ。」っとオノDに火をつけるように頼むと
「みんなお腹減ってるし。」っと付け足したのだった。



結局、宗介は皆が食べ終わるまで帰っては来なかった。

「ったくあのバカ!!」

とうとう切れたかなめは「ちょっと探しに行って来る!!」っと怒りをあらわにして森の中へと消えて行った。

「かなめも大変ね〜」

瑞樹があきれるように言うと

「でも、案外あれでかなちゃん楽しんでるんだよ。」

恭子がっと笑いながら言った。
すると納得したかのように

「確かにそれはあるかもね。」

っと話を聞いていた風間とオノDが返事をしたのだった。

「まぁ〜そのうち帰ってくるよ。とりあえず後片付けしとこ。」

恭子の言葉に皆はいそいそと後片付けを始めたのだった。



それから1時間後、今度はかなめも宗介もまだ戻ってこなかった。

「あの2人・・・・・どうしたんだろ?」

不安そうに風間が言った。

「たぶん、相良が見つからなくてそこらじゅう探し回ってるんじゃないか?」

オノDが答える。

「だとしたら一人で探さないで一度戻ってくればいいのに・・・・」

瑞樹がそういうと

「まぁ〜かなちゃんの事だからあたし達に迷惑かけたくないんじゃない?」

っとのんきに恭子が言った。

「でも、かなめたちが戻ってこないとあたし達帰れないからさ・・・・探しに行かない?」

瑞樹の言葉に恭子が「まぁーそうだね。ちょっと探しに行こうか。」っと腰をあげた。

「あ!あんた達2人は留守番ね。残りの後片付けよろしく!!」

そして、2人は森の中へと消えて行った。



かなめがしばらく歩いていくと少し開けたところがあった。
そこに向かっていくと大きな木の下辺りに人影が見えた。
かなめがその場へ走り寄って行くとその人影は思ったとおり宗介だった。
かなめは怒りをあらわにし「ソーースケ!!」っと叫ぼうと思った瞬間思わず口を押さえ叫ぶのを止めた。
そして、今度はゆっくりとゆっくりと足音をたてずにそーーっと傍へ近づいた。
かなめは宗介の顔を覗きこむ。宗介は小さく寝息を立てて眠っていた。

 (め、めずらしい・・・宗介がこんなところで寝てる。)

かなめはなんだか嬉しくてドキドキしていた。
あの宗介が警戒もせずぐっすりと眠っているのだ。
こんな事は相当めずらしい。

そんな事を思いながらかなめは宗介の寝顔を見ていると
宗介の体が少しずつ横に倒れてきているのに気が付き思わず
かなめは宗介が倒れこまないように隣に座ってしまった。
それと同時に宗介はかなめへともたれかかったのだった。

 (ふぅーーー。よかった。)

かなめは小さくため息をつくと宗介が気が付くまでこうしていることにした。
空は快晴。風も心地よく吹いている。
日の光も大きな木の根元に座っているからだろうか木の葉の間からもれてさす日の光がとても心地よかった。

 (ソースケがうとうとするのもわかるような気がするわ)

するとかなめもいつの間にか宗介の隣で小さく寝息を立てていたのだった。



それからしばらくしてかなめと宗介を探す恭子と瑞樹がその場所へとやってきた。
案の定遠くから2人の姿を見つけた恭子と瑞樹は叫びながら走り寄ってきたのだが
傍まできたとたんピタリと動きを止めた。
2人が眠っているのに気が付いたのだ。
どういういきさつでこういうことになっているのかまったく検討がつかない2人だったが
かなめと宗介が目覚めないように近寄ると恭子は
「こんな2人の姿めったに見ることなんて出来ないよ」
っと小さな声で瑞樹に耳打ちするとニヤリっと笑いいつも携帯しているデジカメを取り出した。
そして・・・・
「撮っちゃえ」っと2人のそんな姿をカメラに収めた。

そして何事もなかったように恭子と瑞樹はいったん離れたところまで戻ると
2人同時にかなめと宗介の名前を叫びながら走り寄った。

「もーーーー何してんのよ2人とも!!」

瑞樹はついさっきまで2人の傍にいたのがばれないように叫ぶ。

その声に気が付いたかなめと宗介は一気に目を覚まし自分達の方へ走ってくる2人の姿を凝視した。
そしてかなめはいつものように笑いながら「ごめんごめん」っとごまかした。

「相良君、もうみんな食べちゃったからね。」

瑞樹の後ろから走ってきた恭子に言われて宗介は「俺の分はないのか?」っと心配そうに聞き返す。
その言葉に「大丈夫だよ。ちゃんととってあるから。」っと言葉を返した。

「かなめまで帰ってこないから心配したよ。」

瑞樹の言葉にかなめはひたすら「ごめんごめん」っと謝った。
まさかここで宗介と一緒にうとうととしていたなんて言えなかった。
もうすでにこの2人にばれているとはつゆ知らず。

「とりあえず、後片付けしてる2人のところへ戻ろう。」

恭子の言葉に促され4人はオノDと風間のところへと戻っていった。


宗介は冷めきってしまっていたバーベキューを口に放り込む。
「温かければもっと美味かっただろうな・・・」っと残念そうに吐き捨てながら食べる
宗介の姿を面白そうに恭子は写真を写していた。

「相良君の写真はこれだけか・・・・」

残念そうにいう恭子に「自業自得よ」っとかなめは返事をする。
しかし、実際かなめが思ってもいない写真がこのデジカメの中に
隠れているとはまったく知る由もなかった。







そして、数日後恭子から手渡された写真を見てかなめは一瞬凍りつく。
しかし、すぐに表情は変わる。



そこには今まで見たことのないくらい気持ちよさそうに眠っている2人の姿が映しだされていた。









(Fin)








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